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2019年11月号 <インタビュー>

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関屋 裕希 氏

危険を招く「怒り」「悲しみ」の抑制
顧客対応とマネジメントに有効な『感情の方程式』

東京大学大学院
医学系研究科精神保健学分野 客員研究員
関屋 裕希 氏

日本人は、とくに職場においては怒りや悲しみといった“ネガティブな感情”を、あまり表に出さないことが美徳とされる。しかし、「ネガティブな感情を感じて適切な形で表に出すことも、生存に必要な大切な機能」と関屋氏は断言する。顧客対応や組織マネジメントを円滑にするツール「感情の方程式」について聞いた。

Profile

関屋 裕希 氏(Yuki Sekiya)

東京大学大学院 医学系研究科精神保健学分野 客員研究員

臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。専門は職場のメンタルヘルス。メンタルヘルス対策・制度の設計、組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けた講演を行う。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など

──「カスタマーハラスメント」など、悲しみや怒りを抑えられない人による問題が話題になっています。

関屋 社会全体がコンプライアンスに厳しくなり、不寛容さが増していると感じます。もちろん、コンプライアンスは順守すべきですが、消費者の商品やサービスに対する要求は高まり続け、過剰サービスが当たり前とされ、期待に沿わない場合、一部の顧客は企業や従業員に対しネガティブな感情をぶつけます。企業側は、従業員に対して人格否定するような顧客は切り捨ててもいい、という毅然とした態度で従業員を守るべきです。顧客のネガティブな感情から従業員を守れない企業は生き残れないと思います。

──相手の、もしくは自分のネガティブな感情とどう向き合うべきでしょうか。

関屋 ほぼ単一の民族で構成される日本は同質的な集団文化で、職場や近所づきあいでは空気を読んで言いたいことを抑え、自分の感情は後回しにすることが正しいとしがちです。最近では、SNSで本来の自分とは異なる自己を演出する人も多く、本当の感情をコントロールしようとする傾向はさらに強まっています。怒りや嫉妬、悲しみといったネガティブな感情は、人間関係に悪影響をもたらすとされ、存在自体を否定されがちです。しかし、本来、生物が進化の過程で生き延びるために必要な機能のひとつ。例えば、不安はリスクに備えるために必要ですし、嫌悪感は危険を遠ざけるため、怒りは生命や大切にしているものを守るためのエネルギーにもなります。ネガティブな感情は抑えたりコントロールするのではなく、ポジティブな面にも注目するといいです。

感情を受け止めたうえで分析
怒りの原因や悲しみに気づく

──ネガティブな感情のポジティブな面に注目するとは、具体的にどういうことですか。

関屋 例えば、心配性な人はリスクを予想し、それに対する対策をとるため、仕事のパフォーマンスが高い傾向にあります。また、諦めるという感情もどうにもならないことを割り切って前に進むためには必要です。このようなネガティブな感情は、抑え込み続けることで、リスクをもたらすこともあります。例えば、感受性自体が麻痺して、喜びや満足感といったポジティブな感情も感じにくくなったり、結果、何かに夢中になったり、他者との親密な関係を築きにくくなることがあります。無理に感情を抑え込むことがストレスになり頭痛や胃痛、肩こりといった身体面に症状として表れることもあります。何かをきっかけに抑え続けてきた感情が爆発し、堪忍袋の緒が切れた状態になって人間関係に取り返しのつかないダメージをもたらしてしまう可能性もあります。ネガティブな感情は本来の機能を理解して付き合うことが重要です。そこで、客観的に感情を理解できるツールとして、「感情の方程式」を考案しました。

(聞き手・石川 ふみ)
続きは本誌をご覧ください


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