<著者プロフィール>
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す
最近の悩み:昔は痩せの大食いだったのが、最近は小食の小太りになっていること
D2Cの本質とは
「世界観を体感させるビジネス」である
ISラボ 代表 渡部弘毅
浅草寺周辺の、何とも表現しがたい世界観が好きで、週末は昼呑みに足繁く通っている、わたちゃんです。友人いわく、「他の街より治安もいい」とのこと。路上で安心した顔で昼寝をしている同世代の人たちが多いことにも納得しました。
近年、D2Cビジネスが盛んです。これは「Direct to Consumer」の略で、自ら企画、生産した商品を広告代理店や間接小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法を指します。ソーシャルメディア(SNS)やECサイト、直営店舗で消費者とコミュニケーションし、生産した商品を販売します。アパレルブランドや美容化粧品ブランドの多くが採用している形態で、ここ数年、メディアでも多く取り上げられるようになりました。コロナ禍以降、リアル店舗での販売が厳しくなった背景もあり、販売手法が注目を集め、取り上げられている傾向もあります。
しかしながら、上記の定義では、商流や物流、情報しか表現できておらず、D2Cの本質は見えてきません。ユニクロやZARAなどのSPA(specialist retailer of private label apparel)でも自営店舗やネット販売で消費者とダイレクト取引をしていますが、D2CとSPAはどこが違うのでしょうか。以下にSPAとD2Cの違いをまとめました。
(1)SPAが効率的に商品を販売することを目的としているのに対して、D2Cでは自社の哲学や世界観を広げることを重視する。
(2)D2Cでは、商品を売るのではなく、ライフスタイルを売ることが目的で、流行やトレンドを追い掛けることはせず、あくまで自社の一貫した世界観に基づいた商品とサービスを提供する。
(3)D2Cではブランドイメージやライフスタイルなどに重きを置き、商品をモノとして解釈するだけではなく、より踏み込んだストーリーの構築が鍵となる。
(4)SPAが効率重視のリスティング広告やWeb広告を多用するのに対して、D2Cは世界観を伝えるため、SNSやオウンドメディアとマーケティングの中心として活用している。
つまり、企業の世界観を商品を通じて体感してもらい、ロイヤルティを上げることで収益を得るビジネスモデルであり、それを実現するには今までの商流、物流、情報流を変える必要があるというわけです。
このように見てみると、図「D2C vs 見せかけのD2C」に整理したように、流行り言葉に乗ったような、いわゆる見せかけのD2Cも多く存在していることが分かります。本質を理解するとその違いが見えてくるのです。
ということで、浅草が醸し出す世界観をもっと体験することが、エセ浅草ファンから本当の浅草ファンへ成長することだと改めて認識。今度昼呑みした後に路上で昼寝してみようかな。
図 D2C vs 見せかけのD2C