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本誌記事 ケーススタディ セゾン情報システムズ

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Casestudy ケーススタディ

セゾン情報システムズ

コンタクトセンター発の「カスタマーサクセス」
名称変更で示した顧客対応の進化と深化

ITソリューションビジネスは、“売り切り型”からSaaS、サブスクリプションモデルへ急速に移行している。ベンダーのなかには、従来の“カスタマーサポート”のミッションや機能を拡張、変化させ“カスタマーサクセス”に部門名称を変更するケースも出てきた。およそ1年前に名称を変更したセゾン情報システムズに、その経緯と具体的な取り組み内容の変化を聞いた。

カスタマーサクセス本部 カスタマーサクセス統括部 カスタマーサクセス部 CSマーケティング課 村上裕子氏、同課 佐藤千夏氏、同部 CSエンジニア課 小暮浩史氏
カスタマーサクセス本部 カスタマーサクセス統括部 カスタマーサクセス部 CSマーケティング課 村上裕子氏、同課 佐藤千夏氏、同部 CSエンジニア課 小暮浩史氏

 クラウドシフトを背景に、「カスタマーサポート」から「カスタマーサクセス」に組織変更を行う企業が登場しはじめている。

 セゾン情報システムズは2022年4月、“カスタマーサービスセンター”から“カスタマーサクセスセンター”に部門名称を変更した。同社は、データ連携・転送ツール「HULFT」シリーズを提供している。従来、パッケージタイプの売り切り型で提供してきたが、徐々にクラウド化を進め、サブスクリプション型に変化している。2023年2月からは、ファイル転送機能を提供するHULFTに、データ連携ソリューション「DataSpider」を組み合わせたプラットフォーム「HULFT Square」の提供も開始。Amazon Web Services(AWS)で稼働しており、SaaS間、SaaSとオンプレミス、SaaSと外部システムの間のデータ連携を可能とするDX支援ツールだ。

パッケージ型からクラウドシフト
あわせて組織変更を行う

 サクセス部門への組織変更については、「名称変更以前から、“お客様の成功を前提としたサポート”、つまり“サクセス”業務には取り組んできました。SaaSビジネスにシフトする中で、売り切り型の考え方ではなく“お客様との長期的な関係構築”へ向けて企業全体で変化していこうという考えで、名称変更に至りました」(カスタマーサクセス本部 カスタマーサクセス統括部 カスタマーサクセス部 CS マーケティング課 村上裕子氏)という。

 担うミッションは、オンボーディングフェーズの顧客に、自走できるようになるまでサポートをすること。ただし、単に問い合わせに答えるだけでなく、困りごとを聞いてヒントやチップスを伝えたり、アップセル、クロスセルにつながる提案などまでカバーする。

 同社に限らず、カスタマーサクセスの担当者は自分で理解し、思考する領域が広いがゆえに、多くの企業がサポート以上の採用難に直面している。そうした状況下でも、同社は採用・教育において「顧客が求める本質を聞き出すスキル」を最重要視し、妥協はしない方針だ。

 極論すれば、技術の知識レベルが多少、不足していても、持ち帰ってテクニカルサポート担当者に聞くことができる。とくに同社のHULFTは提供機能、連携するソリューションが多く、技術的な質問も難易度が高い。すべての担当者がその応対スキルを併せもつことは至難の業だ。まずは“引き出すチカラ”を活かし、コミュニケーションを深めることにフォーカスしているといえる。

利用頻度×接触実績で
顧客を4象限に分類

 一般的にカスタマーサクセス、「顧客の成功」は、顧客の特性ごとに定義が異なり、一様に指標化することが困難だ。結果、ベテラン/新人を問わず「目指すべき方向性」を共有できない傾向が強い。そこで、同社ではクライアント企業ごとの特性を全メンバーが把握できるようにのように分類している。その基準は、「製品の利用頻度」と「問い合わせ実績」の2軸だ。

図 「製品の利用頻度」×「問い合わせ実績」から4象限に分類し、個別最適化した対応を行う

図 「製品の利用頻度」×「問い合わせ実績」から4象限に分類し、個別最適化した対応を行う

※画像をクリックして拡大できます

 カスタマーサクセス本部 カスタマーサクセス統括部 カスタマーサクセス部 CSエンジニア課の小暮浩史氏は「これまでの実績から、コンタクト数と継続率が比例していることが実証されています」と話す。このコンタクトは、必ずしも「問い合わせ数」だけではない。メルマガを読んだか、サポートサイトへアクセスしたか否かなど、コミュニケーション全般のことだ。アクセス状況は、Webアクセス解析サービスを顧客IDと紐づけて把握。どのページを閲覧し、離脱しているのか、閲覧頻度や滞在時間などを個別に把握している。

 一方、利用頻度の低下と解約率も相関性があることから、この2軸をヘルススコア基準のひとつとして規定。左下の“危険領域”にある顧客に積極的に連絡を取りヒアリングを行う。「なぜ使わないのか」「課題や不満は何か」、場合によっては「製品を利用しようとしたきっかけ」に立ち戻って状態や課題を引き出し、“サイレントカスタマー化”による離反を防ぐ。

 現在、右上の“安泰領域”へのアプローチも強化している。具体的には、「事例企業としてフォーラムにご登壇いただいたり、ご意見をいただくなどで、ロイヤルユーザー、ファン化していただけるような取り組みを検討しています」(CSマーケティング課 佐藤千夏氏)。

 その他、ファンを増やすべく、コミュニティサイト「DMS Cube(ディーエムエスキューブ)」を運営。対面イベントは同社が主導で行うが、サイト上でのコミュニケーションは、顧客間のやり取りを尊重し、立ち入ることはあまりない。教えあうことで主体性を強化し、ファンづくりにつなげている。

 「理想は、カスタマーサクセスが中心となって、営業やサポート部門などの他の顧客接点に働きかけて、ロイヤルティを高める施策を展開するようなスタイル。組織力を最大化できるマネジメントを目指します」(小暮氏)

(2023年6月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

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