<著者プロフィール>
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す
最近の悩み:昔は痩せの大食いだったのが、最近は小食の小太りになっていること
ファンづくりを目指すなら
「ペインポイント」を探そう
ISラボ 代表 渡部弘毅
自分のいいところだけ見せてモテる男より、ダメなとこをさらけ出して好きになってくれる女性を探すことが重要だと思う、わたちゃんです。でも、これはモテない男の言い訳にもみえるんですよね。
ファンづくりの施策を立案するために満足度調査は欠かせません。しかし、その際によく陥るワナがあります。自社や自社商品を購入した理由や満足している点ばかりを問う設問になってしまうことです。
ファンづくりのマーケティング施策を練るのであれば、顧客が何を理由に購入したか、どのような点に満足しているかを深掘りするより、顧客が何に不満をもっているか、さまざまなタッチポイントでどんなネガティブ体験をしているかを探る必要があります。
これまでは、顧客の購買理由を明らかにし、それを参考に、他の顧客に購買につながりそうな情報を湯水のように発信し続ける「購買者づくり」の狩猟型マーケティングが主流でした。現在は、顧客のペインポイントを発見してその改善策を顧客とともに継続し体感してもらうファンづくりの農耕型マーケティングへの変革が求められています。そのためにも、満足度調査という考え方ではなく、「不満足調査」という考えでアンケートを取得する必要があるのです。
ところが、実際のプロジェクトでアンケート設計が終了していざ開始しようとすると、上層部、とくに営業部門のほうからストップがかかることが稀にあります。彼らの言い分は以下です。「こんなアンケートだと、自社の悪い点に対して顧客が気づいてしまうじゃないか? 顧客が指摘した点を改善できなかったら逆効果ではないか? 必死で顧客を獲得して維持している我々の努力を無駄にするようなことは止めてくれ」というものです。
顧客視点とはほど遠い、自社視点かつ自分の組織視点の考えです。購買者づくりだけに専念し、ファンづくり活動が浸透していない企業の典型的な事例です。このような企業に限って、社長の年頭やホームページの挨拶には、「わが社は顧客第一主義です」というワードが登場しています。
コンサル先でこのような事態になると、今までいただいたコンサルフィーをすべて返金してプロジェクトを中止したくなります。しかし、プロジェクトメンバーはそのようなことを思っておらず、顧客第一主義に変革しなければいけないという熱い思いをもっている方が多いので、なんとか回避策を探りながら遂行していくことになります。
ということで、家に帰って早速、実践です。カミさんに、「俺の不満点を洗い出してくれ」と言ったところ、アラブの油田地帯で湧き出る油のごとく、底なしに湧き上がりました。カミさんへのマーケティングは狩猟型で、良いところ探しを主体にしたほうがよさそうです。
図 購買者づくりとファンづくりの満足度調査