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本誌記事 インタビュー エン婚活エージェント 会田 健人 氏

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People インタビュー

「サクセス統括」から社長へ──
BtoCビジネスを加速する「顧客理解」戦術

BtoCにおけるカスタマーサクセスは、先進事例、ベストプラクティスの大半を占めるBtoBの運用手法やKGI、KPI設定を参考にするのは難しく、模索段階にある。エン婚活エージェントの会田健人社長に、ツール活用を含めたBtoCビジネスにおける「カスタマーサクセス起点の差別化戦略」を聞いた。

会田 健人 氏
エン婚活エージェント
代表取締役社長
会田 健人 氏
前職より婚活業界で現場マネジメントや教育、イベント企画、業務受託の管理などを行う。2019年エン婚活エージェントにカスタマーサクセス部門長として入社。個人スキルに依存しがちな業態を鑑みて1年がかりで「業務基準書」を作成し、部門全体スキルの平準化を実現。2023年7月、同社代表取締役に就任。

──サービスの概要を教えてください。

会田 登録者同士をマッチングし、婚約成立につなげる婚活サービスを2016年から提供しています。登録、活動準備、お相手紹介、お見合い、交際、婚約成立というステップごとにサポートを行っています()。従来の婚活業界は、登録者と対面で面談し、サポートする形態が一般的でした。当社は、登録から婚約成立までの支援プロセスのすべてをオンラインで完結することができ、アドバイザーによる面談もオンライン(電話またはZoom)で行っています。

図 婚活サービスにおけるステップごとの「サクセス」業務

図 婚活サービスにおけるステップごとの「サクセス」業務

 このすべてのコミュニケーションがデータ化されている強みを生かし、“カスタマーサクセス”の考えを取り入れたサービスを展開しています。

──BtoCビジネスではとくに、カスタマーサクセスの定義や役割が難しいようです。

会田 定義しているお客様のサクセスは当然ながら「婚約成立」です。これはサービスの解約とイコールとなるため、一般的なカスタマーサクセス部門が退会時などに行う「チャーン(離反)抑止」という考えは当てはまりません。ですが、登録から婚約成立までのプロセスにおいては重要な指標となります。登録後は必要書類の提出を促すフォローを、活動開始後は、お見合いや交際時におけるさまざまなアドバイスを行うことで、チャーン抑止というより「活動促進」を図るという観点で、会員のアウトカム(成果)につながる支援を行っています。婚約成立というゴールに向けて、各活動ステップにおけるサクセスを積み重ねていただけるよう、アクションする仕組みを構築、運用しています。

属人化解消と教育促進に一役
業務基準書を新たに構築

──サポートスキルが重要となりそうですが、スキルの属人化は起きないのでしょうか。

会田 私は前職を含めて婚活業界に10年以上、身を置いていますが、スキルの属人化、情報のサイロ化は業界全体が恒常的に抱えてきた課題です。

 そこで、2019年にカスタマーサクセスの部門長として入社後、最初に取り組んだのが業務基準書の作成でした。例えば無印良品は約2000ページの店舗マニュアル「MUJIGRAM」と、約6000ページの本部業務マニュアル「業務基準書」で仕組化し、赤字からのV字回復したことが知られています。各部門の担当者を集めてプロジェクト化、全業務の棚卸しを行い、当社独自の業務基準書を作成しました。作成まで1年を要しましたが、一つひとつの業務に対して「なぜやるのか?」という目的を整理したことで社員同士の意識合わせができ、新人教育時の業務マニュアルとしても活用できています。業務の標準化は、カスタマーサクセス戦略を描くうえで前提条件とも言える重要な項目なので、早々に着手して良かったです。

BtoB事例の流用は難しい?
“自社の”サクセス定義とプロセス構築

──カスタマーサクセスにおける成果が実り、今年7月に社長に就任されることになったのですね。テックタッチを含めた業務支援するITソリューションについてはどのようにお考えですか。

会田 当社は専任の担当者が電話やメールでサポートを行うハイタッチを主としています。一斉メールやセミナーなどでロータッチもある程度行っていましたが、テクノロジーを駆使したテックタッチは模索段階でした。2023年4月に、専用ページ内で会員とコミュニケーションできる「openpage」を導入。当社側で活動の流れや、お見合い・交際時のポイントなどを記事化しopenpage内でお客様にご覧いただくことで、担当者と直接的な接点を持たずとも、活動支援できるようになりました。今後は記事だけでなく、動画なども充実させ、より良い支援を目指します。

──代表に就任されてから意識や行動は変わりましたか。

会田 カスタマーサクセスの部門長だったときは、活動開始後の会員を対象にミッションであるアウトカムに注力していました。代表になってからは対象が拡大し、会員登録時や活動開始前を含めたカスタマージャーニー全体へと広がっています。

 改めて顧客接点を見直すべく、会員の立場になり「広告で婚活エージェントの存在を知り、自分に合うエージェントを探し、登録する」という一連の操作を行いました。より深い「顧客理解」ができたのはもちろん、「カスタマーエクスペリエンス(CX)」における課題も見つかりました。「カスタマーサクセス(CS)=カスタマーエクスペリエンス(CX)+カスタマーアウトカム(CO)」と言われていますが、このCXとCO双方を高めていきます。

──BtoCのカスタマーサクセス部門では、KGIやKPIに悩む方が多くいます。アドバイスをお願いします。

会田 先進事例であるBtoB におけるSaaS事例をそのまま当てはめるのは難しい面があります。会社の業態・業種によると思いますが、私自身が大事にしているのは「自社のサクセスの定義は何か」「それを実現するために最適なものは何か」を考え続けることです。BtoCにおけるひとつの“成功モデル”として、参考になる存在になれるよう研鑽していきます。

(2023年11月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

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