
この実証実験は、再春館システムの新たな取り組みとしてAI技術の活用による働き方改革の推進、また今後も市場拡大が予想されるAIへのニーズに対応するもの。結果を元に、最適な問い合わせ対応ができる業務改善の仕組みを作る方針だ。
18の事例に見る
「カイゼン」のヒント&チップス
生産性向上からCS追求まで
デジタルシフトを踏まえた業務改革
コンタクトセンターのマネジメントは“改善の繰り返し”といっても過言ではない。社会環境や顧客のニーズは常に変化しており、それに応じて運営を見直さなければ、カスタマー・エクスペリエンス(CX)の実践は不可能だ。本誌2018年1月号〜12月号に掲載した「カイゼンの軌跡」「ITの選び方&使い方」よりセレクトした18のカイゼン事例からCX実践のヒント&チップスを探る。
※情報はすべて掲載時のものです
コンタクトセンターは、常に改善を求められている。社会環境、会社方針、顧客ニーズの変化を踏まえた柔軟なマネジメントが重要となる。いつまでも同じ手法、目標では、CX実践は実現せず、高い顧客満足度を得ることは難しい。コンタクトセンターのマネジメントは、絶えず内的・外的要因に気を配り、その時々に応じた施策を打って改善を重ねる必要がある。
図に顧客ロイヤルティの醸成につながる要素を整理した。センター運営の成果としては、上段3つの『効率化/生産性向上』『品質改善』『プロフィット』がある。これを実現する手段として中下段の5つの要素がある。
コンタクトセンターの運営を支えるのは“人財”であり、『採用・研修』『HRM・ES追求』は基盤固めのカナメとなる。しかし近年は人手不足・採用難の状況が続き、品質・生産性向上の手段として『情報共有』や『IT活用』の重要性もますます高まっている。さらには『その他』の創意工夫も求められる。これら5つの手段が3つの成果につながり、最終的に『CS追求』へと至るわけだ。
以上を踏まえ、本誌「カイゼンの軌跡」「ITの選び方&使い方」で取り上げた18の改善の取り組みからCX実現のポイントを見る。
図 「CS追求」につながる「5つの手段」と「3つの成果」
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IT活用が不可欠となる
『生産性向上』の6つのヒント
富士ゼロックスサービスクリエイティブ/住友林業情報システム/ライフティ/富士通/協和/SMBC日興証券
組織力強化がカギを握る
『品質改善』の3つのヒント
エウレカ/ロイヤルカナン ジャポン/SOMPOコミュニケーションズ
VOC活動・人材育成・来店誘導
『経営貢献』の4つのヒント
ポッカサッポロフード&ビバレッジ/ジェーシービー/健康コミュニケーションズ/キューアンドエー
デジタルチャネル強化が必須?!
『CS追求』の5つのヒント
JIMOS/イオンクレジットサービス/ビッグローブ/東京海上インターナショナルアシスタンス/DeNAトラベル
マイナビダイレクト
繁閑差を埋めて「人材育成」強化
「システム」「制度」で事業基盤を固める
採用からトラベルまで、幅広いコンタクトセンター業務を請け負うマイナビダイレクト。季節商材も多く、柔軟なリソース管理は現場だけでなく経営課題でもある。そこで、従量課金で無駄のない運用ができるクラウド型コンタクトセンターシステムを採用。採用・定着といった人材マネジメントの強化と合わせ、事業基盤の整備に取り組んでいる。
マイナビグループのコンタクトセンター機能を担うマイナビダイレクト(旧社名:マイナビコンタクトサービス、東京都千代田区、土井祥康社長)は、2018年7月の土井社長就任を機に“第2創成期”と捉え、成長に向けた体制改革に取り組んでいる。
同社の業務は、マイナビグループの受託だけでも就職支援などの人材系、ウェディング、トラベルと幅広く、それぞれに繁閑があるため稼働席数の増減が頻繁に発生する。また、顧客層も幅広いため、あらゆる世代の嗜好に合わせてカスタマーサービスを実践できる基盤として、クラウド型のコンタクトセンタープラットフォームを選択。現在は、幅広い世代で個人間のコミュニケーション手段として普及しているコミュニケーションアプリ「LINE」の対応を検討している。
また、柔軟なカスタマーサービスを実践するための人材の採用・定着にも積極的に取り組んでいる。少しでも優秀な求職者の応募増を図るために、シフトパターンは約20種用意。採用したのちは、チームワークの醸成を優先。休憩時間を一斉にとったり、オペレータ同士がノウハウを共有するブラッシュアップ研修などを実践している。
代表取締役社長 土井祥康氏
CSソリューション部 部長 千葉昭彦氏
図 事業成長に向けたコア人材の育成
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Center Profile
2017年3月1日に札幌市内で業務を開始。オープンブース200席と緊急対応用のクローズドブース約30席規模で、マイナビグループ内および外部のコールセンター業務を受託。イン/アウトバウンド業務、メール対応業務に加え、求人の原稿作成業務も請け負っている。2018年12月25日にマイナビコンタクトサービスから現社名に変更した。
代表取締役社長
三浦 宏之 氏
<コーナー解説>
カスタマーサービスに注力し、コールセンターやWebサイト、アプリなどを有効活用し成長している企業のキーマンに戦略を聞きます。
プラスヴォイス
コールセンターのバリアフリーを目指す
企業プロフィール
設立:1998年8月19日
所在地:宮城県仙台市青葉区国分町1-8-14 仙台協立第2ビル8F-1
事業内容:ICT事業、メディア事業(聴覚障害者就労支援)
「2018年10月1日、東京都障害者差別解消条例が施行されました。都内に所在する事業者に対する、障害者への合理的配慮の義務化を定めたものです。耳が聞こえない方は問い合わせができないというのは大きな問題。企業は聴覚障害者に対するユーザーサポートについて、もっと真剣に向き合う必要があります」と、プラスヴォイスの三浦宏之社長は指摘する。
同社は仙台に本社を置く、遠隔手話通訳サービスをはじめとした、聴覚障害者支援企業。1998年の設立以来、ICTを活用して聴覚障害者に対する情報通信のバリアフリー化を目指して活動している。
具体的には、代理電話サービスを提供。聴覚障害者からLINEやSkypeなどのビデオ通話を通じて(手話で)依頼を受け、指定先に電話をかける。相手が出ればオペレータは依頼者の要件を音声で伝え、相手の返答を依頼者に手話で返す。コールセンターへも代理電話サービスは可能だが、個人情報を扱うような問い合わせの場合は通訳では対応できないことも多い。そこで、コールセンターサポート・サービスを提供している。
例えば、全日本空輸(ANA)の「お問い合わせ」ページには、「耳や言葉の不自由なお客様」ページが用意されており、そこに「ANA専用代理電話サービス」のボタンが設置してある。クリックするとWebRTCを利用してプラスヴォイスの通訳センターのオペレータに接続する。そのうえで代理電話サービスを開始する。「この場合、正式に業務委託を受けた“ANAの手話通訳センター”となりますので、個人情報を扱うことは問題ありません」(三浦社長)。現在は、大手カード会社、生損保会社、銀行など、金融会社を中心に業務を受託。自治体も多い。今後は、EC関連や製造など、多様な企業にも訴求していく。「コールセンターのオペレータに特別な知識は必要ありません。あくまで通訳ですので、企業側は通常のオペレーションと同じです。導入のハードルは低いはずです」と三浦社長は話す。
対面窓口にも対応。タブレットやスマートフォンがあれば、そこから通訳センターに接続し、依頼者と窓口担当の対話を通訳できる。「オペレータは通訳者ですのでコールセンターでも対面窓口でも同じです。つまり、一度の契約で両方対応できます」(三浦社長)。
聴覚障害者もさまざまで、手話ができない人も多い。その場合は、音声認識・手書きアプリなどを提供して対話を支援する。「手話通訳やアプリを介して、聴覚障害のお客様と企業をトータルで支援します」と三浦社長は強調する。
図 コールセンターサポートのイメージ(ANA利用例)
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問い合わせ窓口格付け調査──生命保険業界
Webサポートの3ツ星は8社
前回調査より大きくカイゼン
生命保険業界の問い合わせ窓口は、電話・Webともに他業界と比べて高評価な結果となっている。とくにWebサポートは、前回調査では3ツ星2社、2ツ星13社だったが、今回は3ツ星8社、2ツ星7社と大きく改善。Webだけで欲しい情報が得られ、申し込みまでできると評価された企業もあった。
図 生命保険業界格付け結果及び、2017年全業界平均との比較
[実際に調査を行った窓口]
アクサ生命保険:アクサ生命 コンタクトセンター、アフラック生命保険:各種商品の資料請求・新規加入・インターネット通販に関するお問い合わせ、オリックス生命保険:各種商品の資料請求、商品やお申込みに関するお問合せ窓口、かんぽ生命保険:かんぽコールセンター、住友生命保険:コンサルティングデスク、ソニー生命保険:カスタマーセンター、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険:お電話でご連絡、第一生命保険:資料請求・保険のお見積もり、太陽生命保険:お客様サービスセンター、東京海上日動あんしん生命保険:新たに保険を検討しており、質問・相談したい、富国生命保険相互会社:フコク生命お客さまセンター、三井生命保険:資料請求・お見積りダイヤル、明治安田生命保険相互会社:コミュニケーションセンター、メットライフ生命保険:お電話でのご相談、ライフネット生命保険:電話での保険相談
就業形態/エリア別有効求人推移──厚生労働省
有効求人倍率推移(季節調整値)
9月の有効求人倍率は1.63倍(季節調整値)で7カ月連続の1.6倍台を記録。パートタイム、正社員ともに高止まり傾向で、企業にとっては採用難が続いている。
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コールセンター集積地の有効求人倍率推移(パート含む、季節調整値)
集積地別(北海道、宮城県、東京都、福岡県、沖縄県)では福岡県以外で前月並み、あるいは上回っている。北海道、宮城県が上昇傾向にある。
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全国およびコールセンター集積地の新規求人倍率(季節調整値)
景気の先行指標である新規求人倍率は2.40倍で前並み。新規求人数は4.6%増となった。年末年始に向けた需要増の影響か、運輸・郵便業の上昇率が高い。
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“つながらない体験”を可視化する
「カスタマコントロール」活用のススメ
限られたリソースを有効活用するには、「とれなかった電話」の正確な把握が不可欠だ。“つながらない体験”はPBXから出力されるレポートでは把握できない。NTTコミュニケーションズが提供するフリー/ナビダイヤルの管理機能「カスタマコントロール」の活用法を検証する。
企業が真の意味で顧客を理解するには、着信後のCS(顧客満足)だけではなく着信前のCX(顧客体験)にも関心を払う必要がある。そのためには、“顧客が発信してから着信するまでの体験”の可視化が欠かせない。
PBXのレポートで確認できるのは、図に示す(2)着信呼数からで、(1)発呼数や(5)話中呼数は通信キャリアが提供するレポートでしか把握できない。フリーダイヤル/ナビダイヤルを契約している場合は、カスタマコントロールの管理画面からいつでも容易に把握できる。
労働人口が減少するなか、「呼量に合わせて必要要員数を集める」といった従来型のマネジメントが通用しなくなっている。今後は、より精度の高い呼量のコントロールとリソースマネジメントが必要だ。カスタマコントロールでは時間帯ごとの話中呼数をみたり、かけ直している顧客の数や、発信元が固定電話か携帯電話かといったレポートもオプションで取得できる。発信者の分析は、自動化すべきコールと有人対応すべきコールの分類につながり、限られたリソースを有効活用するためには不可欠な取り組みだ。
相次ぐ災害を受け、BCP対策の一環でナビダイヤルを検討する企業も少なくない。被災地域の着信を他拠点に振り分けたり、IVRの案内を変更するといったマネジメントも、カスタマコントロールを使えばどこの拠点からでも可能だ。実際に、2018年9月の北海道胆振東部地震ではこれらの機能を活用したセンターが数多くあった。携帯電話からの問い合わせについては、SMSでFAQサイトや折り返しコールの申し込みサイトのURLも送信でき、これも緊急時のあふれ呼対策として浸透しつつある。
図 コールボリュームの定義
(資料提供:コールセンターの教科書プロジェクト 熊澤伸宏氏)
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コールセンター市場に“アマゾンエフェクト”
「Amazon Connect」への反応
アマゾン ウェブ サービスのクラウド型コンタクトセンター「Amazon Connect(アマゾンコネクト)」の東京リージョンがいよいよ本格始動した。12月に開催したセミナーでは、早くも採用企業が登壇。競合・協業となるITベンダー各社がどう捉えているのか。期待と脅威が入り混じった反応を見る。
突出した研究開発力を基盤としたAWSのクラウド型コンタクトセンター「Amazon Connect(アマゾンコネクト)」。2018年12月に東京リージョンでの提供を開始したことにより、国内コンタクトセンター/CRMベンダーの注目が急速に集まっているが、プラットフォームとしての “実力”は、どの程度なのか。アマゾン ウェブ サービス ジャパンおよび協業ベンダー、競合ベンダーへのヒアリングを基に検証する。
図 「Amazon Connect」の概要
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農家と消費者のマッチング・ビジネス
徹底したDB活用で「コンシェルジュ」を実現
ビビッドガーデン
代表取締役CEO
秋元 里奈 氏
大量生産・大量消費の時代の終焉がもたらした新しいビジネスモデル──それが「マッチング・ビジネス」だ。よりこだわって作られた商品やサービスを、その価値を認める消費者に届ける。農業の世界でそれを目指し、「食べチョク」を立ち上げたビビッドガーデンの秋元CEOは、「ITを駆使して新たな販路を構築したい」と意気込む。
Profile
秋元 里奈 氏(Rina Akimoto)
ビビッドガーデン 代表取締役CEO
神奈川県相模原市の農家出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、ディー・エヌ・エーへ入社。Webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げに携わった経験から、農業の課題解決に挑みたいという気持ちが強くなり、2016年11月にビビッドガーデンを創業。
──2017年8月にリリースした「食べチョク」とはどのようなサービスでしょうか。
秋元 オーガニック野菜の生産者と、品質にこだわる消費者をつなぐマーケットプレイスです。中間業者を介すことなく、季節や買い手の希望に合わせた野菜や米を生産者自身の手で梱包・配送してもらうため、一般の流通経路よりも新鮮な状態で消費者の手元に届けることができます。生産者は現在200の登録があり、中には年間100種類以上の野菜を育てている生産者もいます。消費者側は家族に無農薬野菜を食べさせたいと考える30〜40代の主婦が多く、一ヵ月あたりの平均客単価は6000円ほどです。個人の他、レストランなど事業者の販売先への売り上げも伸びています。
──創業の経緯を具体的に教えて下さい。
秋元 実家が農家だったのですが、私は「農家は儲からないから継ぐな」と言われて育ちました。自分の名義で農地も持っていますが、それは何十年も放置されており、多くの生産者が同じような状況になっていることに違和感を覚えていました。新卒でDeNAに入社し、ITテクノロジーを駆使することでレガシーな業態の産業を発展させる仕事に携わりました。それはまた別の産業でしたが、同じように農業が抱える課題をITで解決して盛り上げられるのではないか、と考えるようになりました。そこであらゆる生産者にヒアリングを行ったところ、小規模な生産者が抱える“ある共通した課題”に気付きました。その解決はDeNAに勤めながら片手間でできるようなことではないと考え、退職して起業することを決断しました。
──その課題とは何でしょうか。
秋元 販路の選択肢が少ないことです。流通経路上で野菜の売値の価格は決められており、大量生産でないと採算が取りづらい構造になっています。手間やこだわりをかけて付加価値を高めても、そのぶん価格を高く設定することができません。また、最近は一部の量販店で生産者の「顔」を入れた売り方をするケースもありますが、多くはどんなに手間をかけても大量生産の農産物と同じ扱いになってしまいます。「こだわらない方が得だ」というパラドックスのような状況に陥っていました。多くの農家が抱える明確な問題であるのにも関わらず解決策がないことに私は大きな課題意識を持ち、農作物の新たな販売経路となる食べチョクというサービスを立ち上げました。
(聞き手・生嶋 彩奈)
続きは本誌をご覧ください
奥村 祥太郎 氏
執行役員
<コーナー解説>
ITソリューションベンダーのキーマンに製品・販売戦略を聞きます。
バーチャレクス・コンサルティング
企業のカスタマーサクセスを支援する
「応対品質の強化」と「応対自動化」
企業PROFILE
本社所在地:東京都港区虎ノ門4-3-13 ヒューリック神谷町ビル8階
代表者:丸山勇人 代表取締役社長
従業員数:598名(2018年9月30日現在)※アルバイト・パート含む
企業URL:www.virtualex.co.jp
<コーナー解説>
ITソリューションの導入に関し、背景や動機、選定要素と運用ポイントを聞く事例記事です。
住信SBIネット銀行
リアルタイム認識で全通話をテキスト化
ACW省力化とVOC分析・活用を実現
経営がカスタマーサポートに対して期待する役割のひとつが、「コンタクトを減らすための提案」だ。それを果たすには、顧客の声を関連部門や経営に還流し、サービスや製品の改善を図るよう、促す必要がある。
インターネット専業銀行の住友SBIネット銀行は、応答率は90%以上の維持に努めることに精一杯で、VOCの源泉となる応対履歴を詳細に入力できない状況にあった。そこで、VOC分析とともに応対履歴の入力支援も可能な、アドバンスト・メディアが提供する音声認識ソリューション「AmiVoice Communication Suite3」とSCSKが提供するテキスト分析ツール「VOiC Finder」を採用。約4カ月のPoCを経て本格導入し、応対履歴入力の省力化に成功した。現在は、VOC分析による業務改善に取り組んでいる。
今月のPOINTS!
■システム概要
VOC分析を目的に、アドバンスト・メディアが提供する音声認識ソリューション「AmiVoice Communication Suite3」のリアルタイム音声認識版と、SCSKが提供するテキスト分析ツール「VOiC Finder」を導入した。応対終了後、音声認識のシステム画面上に通話の全文テキストデータにアクセスできるURLが発行される。
■選び方のポイント
VOC分析とともにVOCの源泉となる応対履歴の入力を補完するため、リアルタイムの音声認識による通話音声のテ
キスト化が可能なソリューションを選定した。
■使い方のポイント
PoC(概念検証)の際、音声認識の“可読率”を重視してチューニング。オペレータが通話音声テキストを読んで内容を理解できるかどうかを5段階で評価し、実用に支障のないレベルまで精度を向上してから本格運用に移行した。VOC分析は、製品・サービスごとに分析。毎月、製品・サービスを抽出テーマに据え、改善施策を立案・展開している。
写真左は、システム開発第2部調査役の渡辺大洋氏、同右は当時カスタマーセンター副主任の荘司直人氏(現在はマーケティング部)
図 音声認識の活用イメージ
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<コーナー解説>
コールセンターの業務改善のビフォー・アフターを中心に施策をまとめます。
城南進学研究社
アウトバウンドで塾選びを提案
「対話の質」で大手予備校に対抗
今月のHints!
少子化に加えて、“塾探し”の起点がネットに移行したことで競争が激化する学習塾。ポータルサイトで資料請求した顧客(生徒の保護者)に対し、いかに迅速かつ的確にアプローチするかが生徒獲得のカギを握る。大手学習塾がIT活用でスピードの優位性を図る一方、城南進学研究社は“対話の質”で勝負する。教場で生徒や保護者のサポートを行った経験を持つ社員が中心となってアウトバウンドを行い、塾探しの背景や学習の悩みを聞き出して寄り添い、信頼関係を醸成したうえで最適な教場を提案、送客している。
マーケティング本部カスタマーサポート部お客様サポートセンターの井上友紀氏
成功体験を通じて人を育てる!
チームビルディングのカナメ役
ヤフー
MS統括本部 オペレーション本部 代理店サポート部
アカウントプランニング スーパーバイザー
松本 瞳子 氏
Profile
松本 瞳子 氏(まつもと・とうこ)
2014年、ヤフー入社。2016年4月から2年にわたり「成功循環モデル」の取り組みを実行し組織の土台を構築。楽しみながら個人が成長し、持続的に成果を出せるチーム作りに努めている。現在は、電話問い合わせチームと提案チームを融合し、本質的な課題に気付く力と先読みの提案ができるサポートの創出を目指している。
国内最大級のポータルサイト、「Yahoo!JAPAN」におけるインターネット広告のサポート部門に属する松本瞳子さん。「社外の広告代理店と、社内の営業がお客様」というように、顧客が複数存在する同部のようなケースでは、所属するメンバーのベクトル合わせ──つまり組織の基盤となる考え方の共有が極めて難しい。松本さんは、さまざまな業務改善の取り組みを主導、組織の土台作りに貢献した。
全員参加型の取り組みを主導
経営貢献型組織の基盤を作る
松本さんは、「たとえ小さなことでも、成功体験を実感して、チームで共有できる環境を創りたい」という。共有するために重要なポイントは、やはりチームワークの醸成だ。
その目的を達成するために、「私のトリセツ」「ななめアンケート」など、さまざまな施策を実施。考え方や行動の質を高めるための取り組みも主導し、方法論や成果共有に注力した。
とくに大きな効果を生んだのが、他部門でも行ったことがないという、メンバーが全員主役の「成果発表アワード」だ。これは全員参加型かつ全員が講師という情報共有の場になっており、モチベーション向上にも大きく貢献している。さらに他チームにも横展開できるような体系化にも取り組んでいる。
同部のスタッフの仕事は、単に顧客の疑問に応えるだけでなく、「ビジネスに貢献するような提案をすること」が大きなウエイトを占める。個人月次報告会、個人カルテの作成といった「成長のための仕組み」によって、顧客のニーズに合わせた新しい提案メニューの作成につながり、提案納品までの日数も大幅に削減できるなど、大きな効果を生んだ。同時に、すべてのメンバーが「自身の仕事にいくらコストがかかっているのか」を意識づけ、売り上げ貢献だけでなくコスト圧縮にも気を配ることができるチームに成長している。
最近は他部署からの研修依頼、交換留学、問い合わせチームと提案チームの融合による新しいサポートなど、チームだけでなく全体のレベルアップにつながる取り組みも生まれている。
松本さんは今後も、「人材育成に関わる仕事をしたい」と希望している。「みんなが自分の成長を感じながら働いていってほしい」という想いが、全員参加型の取り組みを推進する原動力となっているようだ。
実践
顧客対応とマネジメントをラクにする!「ソーシャルスタイル理論」の活用法:第4回
意見を出すタイプ、検証するタイプ
最適な役割分担がチームを強くする
小池 武
コミュニケーションのスタイルを4種類に分類し、それぞれの特徴を理解することでスムーズな対話につなげるソーシャルスタイル理論。今回は、「各自の能力を十分に活かすこと」を目的とした、職場での活用方法について検証する。意見を出すことに長けているタイプや、それを検証することを得意とするタイプ──それぞれの長所を活かした組織作りがチームのパフォーマンスを飛躍的に向上させていく。
いまさら聞けない『失敗しない求人方法』:第12回
「Google for jobs」にも対応
Facebookを活用しよう!
神宅謙一郎
12月号で、SNSを活用した採用方法を紹介した。今回はFacebookに絞った採用活動をまとめる。2019年は、Googleの求人サービス(Google for jobs)が採用活動におけるカギになると推測され、無料掲載が可能なFacebook求人にも注目が集まると考える。アカウント登録、求人情報登録、注意点などを検証する。
<コーナー解説>
店舗など、コールセンター以外を含めた接客やサービスのプロにその心構えやノウハウを聞きます。
高度1万メートルでも“快適”を提供
観察・想像・振り返り──おもてなし3ステップ
全日本空輸
客室乗務員
大濱 佳子 さん
Profile
大分県出身。高校生の頃、湯布院の英語セミナーに参加し出会った上智大学に留学中の米国人と文通を重ね、苦手な英語を克服し、大学は英語学科に入学。「英語を使って人の役に立つ仕事をしたい」と考え、客室乗務員を目指す。1987年、全日本空輸に入社。国際線や国内線の客室業務、人材育成などに携わる。ワインや温泉のソムリエ資格も持つ。趣味は発酵調味料を使った料理と温泉巡り。ベルギー国王をアテンドした経験もある。
高度1万メートルの空の上は、たとえ飛行機に乗り慣れていても非日常的な空間だ。乗客の緊張を緩和し快適に過ごせる空間を演出することも、CA(キャビンアテンダント)の重要な役割のひとつになる。
大濱佳子さんは、「ご安心いただくためにも、不快感を軽減いただくためにも、言葉を尽くすことが大事だと考えています」と強調する。
手荷物を前の座席の下に置いたり、携帯電話の電源を切るといった機内ルールについても、「なぜお願いするのか」「守らないとどうなるのか」など、言葉を丁寧に重ねることが、ストレス低減と遵守を促すことにつながるという。
サービスのプロセスはマニュアルに落とし込めても、「付加価値は、その都度の創意工夫でしか提供できない」と話す大濱さん。工夫の引き出しの源が、チームプレーだ。観察力のあるCAもいれば、誕生日や銀婚式といった旅行の目的を聞き出すことが得意なCAもいる。情報と智恵を共有し、社員が一丸となって付加価値を生みだすことを、同社では「ANA'sマジック」と呼び推奨している。
高度1万メートルの上空では何が起こるかわからない。搭乗前のブリーフィングでは、車椅子などお手伝いが必要な乗客のための行動確認など情報共有を行い、安全と快適の確保を図る。最高責任者として搭乗することが多い大濱さんは、「クルーの力を100%発揮すれば、どんなことも乗り切れる自信があります」と言い切る。チームワークの強さと、日ごろの訓練の積み重ねがこの自信の源だ。
<コーナー解説>
ITソリューションの導入に関し、背景や動機、選定要素と運用ポイントを聞く事例記事です。
ヘッドセット
ストレスフリーな使い心地を優先
対応品質も左右する唯一無二の仕事道具
ヘッドセットは、オペレータにとって仕事をしている間は必ず身に着けている唯一無二の仕事道具であるとともに、消耗品でもある。ES(従業員満足)のためにも、コスト最適化のためにも、ストレスフリーかつ、壊れにくい製品を選定しなくてはならない。主要4社が推す旗艦モデルの機能から最近のトレンドを検証する。
オペレ—タやSVにとって最も身近なITツールであるヘッドセット。執務時間のほとんどを装着して過ごすだけに、その「品質(フィット性など)」は従業員満足にも大きく影響する。主要各社は、各パーツにキメ細やかな工夫を加えたり、素材を厳選するなどして、“仕事道具”としての「使い心地」や「耐久性」を追求している。
記事内で取り上げているベンダー(掲載順)
長塚電話工業所
GNオーディオジャパン
日本プラントロニクス
ゼンハイザージャパン
写真のように、立ち仕事をしているスタッフも見受けられる
スタイリッシュで格式ばらないオフィスデザインはスタッフの距離を縮めるようだ
ガラス張りにすることで、オフィス・会議室ともに圧迫感を払拭できる
フィデリティ証券
採用難対策として従業員満足度を高める
よりストレスフリーな職場を目指して
定着こそが、最強の採用難対策。コールセンター運営の経験が長いマネージャーほど、この認識に基づいた人材マネジメントを施す傾向が強い。
フィデリティ証券 カスタマーサービス部の中村 剛 部長もその一人だ。
同社では、人材を育て長く働いてもらえる環境づくりを重視した“ストレスフリーな職場”によるES向上に取り組んだ。例えば、コールセンター業務はとにかく座りっぱなしで疲れがたまるので、写真のような上下可動式デスクを導入した。従業員の体調や気分によっては、立ちながらの作業もできる。また、会議室をガラス張りにすることでオフィスの開放感を演出するとともにハラスメント対策としている。さらにリフレッシュスペースやコーヒーサーバーも設け、健康を意識した果物やナッツ類を並べるなど従業員の声を反映させている。
加えて有給休暇の取得率向上や正社員化、子供がいる社員の時短勤務促進を進めた。チームメンバーを分かり合うための取り組みとして、他部署を交えてのスポーツ大会やイベントを催し、チームへの帰属意識と仲間を思いやる風土作りを心がけ、風通しの良い職場づくりを目指している。
その結果、従業員満足度調査は2015年から今年まで、72%、82%、93%、98%と順調に上がっている。また、離職者数はここ2年でわずか2名。その前の2年に比べると半分以下になった。従業員が「会社から大切にされている」と実感できれば、会社への帰属意識や満足度は向上し、離職数も減る。設備・制度・現場の取り組みがかみ合った典型的な好例といえる。
従業員の希望を反映させたもの
コーヒー・紅茶・ココア、カフェインレスのコーヒーも
「コンフリクト・マネジメント」のカギは顧客志向が握る
ISラボ 代表 渡部弘毅
ここ数カ月は仕事を結構頑張ったので、少し実入りが多く、ブルブル振動ダイエットマシンの購入を狙っている、わたちゃんです。でも、カミサンはローンの繰り上げ返済を狙っているのです。
企業の職場においては、組織間や個人間での競合、対立、衝突、葛藤といった、いわゆる「コンフリクト」は必ず発生します。企業としてのビジョンや方針、目標が明確に存在しシェアされている企業においても、具現化された行動レベルになると組織や個人の考えレベルでは違いが発生し、業務を推進する際にはコンフリクトは必ず存在します。むしろ、コンフリクトがあることが正常なのです。
一方で、コンフリクトが感情的な対立まで発展すると、職場がギスギスした雰囲気になり目覚ましい成果や画期的な発想が困難になってきます。とくに、“和を以て貴しとなす”文化が根強い日本では、波風を立てないように自分の意見を抑えようとする風潮もあります。昨今では「忖度」という言葉もよく聞きます。
しかしながら、こうした和を尊重し過ぎしたり、忖度が横行する組織に成長はありません。コンフリクト・マネジメントとはコンフリクトをプラスに捉えてマネジメントしていくことです。コンフリクトは、組織が変革を推進している証拠であり、感情的な対立を抑えたマネジメントさえできれば、組織によい変革をもたらします。
そのためには、オープンな場で感情的なぶつかりを避けた前向きな議論をしていくことが重要になります。そして、この「感情的なぶつかりにならないようにする」というのが最も重要なマネジメントテクニックと言えます。
一般的には、(1)変革のためにはコンフリクトは重要であるという認識を組織全体でシェアする、(2)誰が正しいか、あるいはどちらが正しいかといった議論は避け、何が正しいかという議論をする、(3)上司は積極的に参加、率先してオープンな場で協調的な解決策を議論する──といった手法が重要と言われています。
これに加えてコールセンターや顧客接点業務固有の議論・解決策としては、「お客様にとって何が重要か?」ということを常に問い続けることです。組織間や個人間では利益が対立することがしばしばあります。「この業務をどちらでやるべきか?」といったことがそれに当てはまります。お互いに忙しい組織や個人が業務量の負担が増えることは避けたくなります。そんな時には「何をすればお客様の利益につながるか?」という発想に基づきお客様志向の議論をすることで、協調した新しい案が生まれます。コンフリクト発生のプラス面を認識し、前向きに解決して、お客様、企業、組織、個人にとって利益のある解決策を考えましょう。
ということで、我が家のコンフリクトもプラスと受け止め、前向きに解決策立案を試みたのですが、協調案が出てこないことと、「何が正しいか」を突き付けられ繰り上げ返済となりました。コンフリクト・マネジメントの失敗例と言わざるを得ません。
図 コンフリクト発生時の5つの態度
コラム
市界良好:第82回
混沌とするコンタクトセンターのIT市場
秋山紀郎
AfterCall~電話の後で:第82回
「数値」だけがKPIではない
“顧客の感覚”を大事にしよう
長掛文子
3 Minutes Lesson 毎日できるメンタル・ケア:第63回
言葉にならない思いを“循環”させましょう
奥 富美子
わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす:第48回
渡部弘毅