事前期待を察しない丁寧な対応=余計はお世話?!
ISラボ 代表 渡部弘毅
カミさんの仕事の愚痴はいつも聞き流していたので、たまには真面目に聞いて適切なアドバイスをしたつもりが、逆ギレされてしまった、わたちゃんです。なんだか納得いきません。
サービスサイエンスの日本での第一人者である、諏訪良武氏によるサービスの定義では「人や構造物が発揮する機能で、お客様の事前期待に適合するものをサービスという」と解説しています。(出典:サービスの価値を高めて豊かになる リックテレコム刊)
ここでもっとも重要なポイントが、「お客様の事前期待に合致するもの」という定義です。言い換えれば、「お客様の事前期待に合致しないものはサービスとは呼ばない」ということです。いくら相手の気持ちになって丁寧な対応をしても、その相手の気持ちを汲み取り違えたら、それは“余計なお世話”になるのです。
「サービスに対する事前期待」という定義はかなり広くなりますので、もう少し焦点を狭めて「コールセンターへの相談コールに対してどのように応対して欲しいか」という応対品質への事前期待と考えてみましょう。相談コールに対する応対品質への事前期待は、大きく2つあります。ひとつは、早く正確に解答を出して欲しいという、問題解決型の応対をして欲しいという事前期待で、もうひとつは相手の状況を理解して共感型の応対をして欲しいという事前期待です。
コールしたお客様のプロファイルや置かれている状況、コールリーズンによって、どちらを期待しているかを察知して対応することが、満足度の高い応対につながります。AIなどの自動化を取り入れ、相談に対して迅速かつ正確に回答するというエフォートレス重視の品質向上は、問題解決型の応対に対する事前期待が大きいお客様には満足度が高いかもしれませんが、共感型の応対への事前期待が高いお客様には支持されないかもしれません。従って、事前期待に応えるには、正確性、迅速性、好印象、共感性、柔軟性、安心感という6つのサービス品質を使い分ける必要があります。
また、1回のコールの開始から終話の過程においても、こうした事前期待が入り混じった応対が必要となってきます。優秀なオペレータは自然とお客様の事前期待を汲み取り6つの応対品質を使い分けているのです。
ということで、カミサンの今回の結果を分析したところ、相手の事前期待に合わせて共感対応のフリをしているだけということがばれて、慌てて事前期待ではない問題解決型対応をしてしまい、逆ギレにつながったと考察しました。違うかな。
図 2タイプの応対とサービス品質