コロナ禍で加速した「非対面/非接触」ニーズ
「チャットボット」の現在地
カスタマーサービスや営業など、あらゆる顧客接点で非対面/非接触へのシフトが進んでいる。もともと非対面でサービスを実施していたコンタクトセンターでは、3密回避の観点からセルフサービスの強化が必須だ。利用が広がっているチャットボットの活用ポイントを検証する。
新型コロナウイルス禍は、消費者の動きを大きく変え、その影響はコールセンターにも及んだ。例えば、給付金の申請について全国の自治体に問い合わせが集中したり、緊急事態宣言が発令され“巣ごもり生活”が続くと、各社のコールセンターに契約内容の確認や商品に関する問い合わせなどのコールが増えた。従来からオムニチャネル化を進めてきた企業は、既存の仕組みを活用してチャットボットの対象範囲を拡大する形で新型コロナ禍を乗り越えつつある。
一方で、とくに問い合わせが急増した自治体では、チャットボットの導入が初となるケースも少なくなかった。しかし、ベンダー各社のアドバイスをもとに導入範囲や目的を絞り込んだチャットボットを導入し、成果を創出している。
新型コロナウイルス対策で、全区民に3万円、中学生以下にはさらに5万円を給付する独自の給付金を支給した東京都品川区は、モビルスのチャットシステム「mobiAgent」を導入し、申請方法や申請状況などの質問に対応するチャットボットを構築(画像1)。申請方法についての問い合わせは該当するFAQを返し、状況確認については、問い合わせ番号と受給者(世帯主)の誕生日を入力すると処理状況を返答する。
画像1:東京都品川区のチャットボット(資料提供:モビルス)
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AIチャットボット「CHORDSHIP」を提供する富士通は、新型コロナウイルス感染症対策チームを設立、20以上の自治体、60以上の保健所に導入している(2020年8月現在)。例えば長崎県では、従来、保健所が人手を使って行っていた濃厚接触者や接触者の健康状態確認をアプリのチャットボットで自動化した(画像2)。同アプリは、県内の企業や各種団体、学校などに無償提供され、従業員や学生の健康管理に役立てられる予定だ。
画像2:富士通が提供する健康管理アプリのチャット画面(イメージ)
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新型コロナ禍を乗り越えるため、自治体や金融機関を中心に導入が進んだチャットボット。予想だにしなかった臨時的な導入ではあるが、「サービスの一部を切り出して自動化」することの有効性が検証される結果となった。今後、終わりが見えないウィズコロナにおいては、この成果をベースに、チャットボットの活用範囲がますます広がることが見込まれる。