“自ら発信する顧客”を育てる
5G時代の条件『共鳴(レゾナンス)経営』
ライスカレー
代表取締役社長
大久保 遼 氏
SNSは、わずか10年余りで企業と消費者の関係を一変させた。そしてコロナ禍のいま、InstagramやYouTubeといった画像・動画系プラットフォームが拡大し、企業ユーザーも増えている。SNS活用のプロであるライスカレーの大久保代表は、消費者との関係作りの要諦について「共感から共鳴」とその変化を表現する。
Profile
大久保 遼 氏(Ryo Okubo)
ライスカレー 代表取締役社長
2008年聖光学院高等学校卒、2012年東京大学経済学部卒。同年ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門入社。主に広告、通信・メディア、テクノロジー関連のM&A、ファイナンシングのアドバイザリー業務に従事。2014年オンライン広告テクノロジー企業であるMomentumを創業。2016年ライスカレー(旧ライスカレー製作所)を設立、新代表取締役に就任。
──ソーシャルメディアやマーケティングの専門家として、コロナ禍以降の消費行動をどう捉えていますか。
大久保 2つあります。まず巣ごもり消費が拡大したことで、サブスクリプション型のビジネスがより拡大する土壌ができたのではと感じています。コロナ禍で利用者の抵抗感が減ってきてています。
もうひとつは企業側のSNS運用です。緊急事態宣言の後、SNSの情報発信を継続、あるいは活発にした企業と、ほぼ自粛モードに入った企業に二極化しました。ところが、自粛した企業が「当分、終息しない」状況で再始動しても、いったん離れたユーザーはなかなか戻らない。マーケティングやプロモーション、そしてカスタマーサポートといった対顧客の企業活動は、「継続」が最も重要であることを再認識したと思います。
消費者の情報源が変化
クチコミの価値が急向上
──そもそもSNSに着目したきっかけは何でしょうか。
大久保 大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券の投資銀行部門に入社しました。企業の買収やIPOなどをアドバイスする部門で勤務した後、独立して不正広告詐欺対策ツールを提供するモメンタムを創業したのですが、そのときに、「企業側が発信する従来型の広告よりも、一般の消費者による情報発信の方が消費者の反応がはるかに大きい」と気がつき、ライスカレーを創業しました。
──クチコミの効果が大きくなったということですね。
大久保 スマートフォンが普及して動画投稿などを一般の消費者ができるようになったことで、消費者の情報源が変化しています。以前は、消費者が購買する際、参考にする情報の9割が企業から、1割が友人知人、一般消費者からでした。ところが、今はSNS検索などを通した一般消費者からの情報が7割近くになっています。
当然、企業側も無視することはできません。SNS運用も一方的な情報発信ではなく、いかにユーザーを巻き込んでいけるか、ユーザーの目線に立ってクチコミを利用できるかがポイントになります。実は、「ライスカレー」という社名もSNSのクチコミに由来しています。Googleで「ゴッホ」と検索すると、画家のゴッホの絵画などが表示されます。ところが、創業当時、Instagramでは下北沢の「ゴッホ」というカレーライスのお店が上位表示されていたのです。これらはまさにクチコミによるこれまでとは違う形の販売力、営業力になっていくのでは、と感じました。設立当初、「ライスカレー製作所」という社名で始動したのもクチコミの威力を表現したかったからです。
(聞き手・嶋崎 有希子)
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