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2021年4月号 <市界良好>

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市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

KPI管理を見直そう

秋山紀郎

 多くのコンタクトセンターが最も重視しているKPIと言えば、応答率であろう。もちろん、電話がつながらなければコミュニケーションにならないから、基本の基であるのだが、応答率だけに注力するのはよくない。応答率を高くするため、オペレータを多くアサインしすぎたり、オペレータが早く電話を終わらせようとしたり、転送やエスカレーションが増えるなど、さまざまな弊害が生じる。それにも関わらず、応答率確保に躍起になっているセンターが未だに多く、応対品質向上などのミッションやビジョンとKPIに不整合を生じさせている。高い応答率によって電話がつながったとしても、顧客が満足できる対応が得られないのであれば、都合がよいときにコールバックしてもらった方がいいだろう。その方がセンター稼働率の平準化にもつながる。

 他のKPIでも似たような事象は起きる。スタッフ稼働率だけに注力していると、入電を避けるかのように後処理入力に時間をかけるオペレータや、後処理時間を管理すれば後処理と申告せずに他の作業で申告するオペレータが出てくる。なかには経験的に自分に入電の順番が来ることが分かると、席を外すオペレータもいる。人は疲れたら休みたくなるのは本能だから、オペレータだけが悪いとは言えない。いつも決まったKPIで見ているだけでは歪みが生じやすい。

 このような事象はなぜ起き続けるのか。

 その理由は、コンタクトセンター業務を管理する部門や委託元企業の勉強不足がある。いつも決まったKPIをモニタし、そこに大きな変化が生じていなければ問題ないと考えているケースが多い。各センターのKPIレポートだけでなく、実態を見ることが大切だ。さらにはセンターごとのKPIだけでは個別最適を生じさせるから、Customer Experience(CX)のKPIも重要だ。一般には、顧客満足度やNPS(Net Promoter Score)、CES(Customer Effort Score)や顧客維持率などが採用されている。このような複数のKPIによるバランスよい管理と、実態に合わせた見直しが必要であり、そのために現場に足を運ぶことも大切である。

 最近、在宅コンタクトセンターが増えつつあるが、孤立と燃え尽きが生じやすいことに留意してほしい。とくに、気軽にSVに尋ねたり、休憩室で雑談したりできなくなったことが積み重なり、オペレータがストレスを抱えていく事象がある。管理者にとっても、現場を視認できない在宅オペレータの管理は難しい。そのため、感情解析ツールの活用など新たなKPIも必要だろう。一方で、山ほどのKPIで在宅オペレータを身動きが取れないように管理してしまうと、ストレスを増大させることになる。

 在宅勤務中のデスクワーカーは、気分転換で体を動かすこともあれば、休憩時間の自由度も高い。外周りの新入り営業はストレスが溜まればカフェに行くだろうし、申告もなければ、滞在時間が長いと言われることも滅多にない。ただでさえ数値で管理しやすいコンタクトセンターであるが、細かすぎるのはよくない。SVからチャットで雑談するゆとりや、オペレータにもう少し勤務の自由度を与えた方がよい。そうしないと離職率というKPIに影響が出てしまう。


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