消費者庁は、東京電力ホールディングスの子会社、東京電力エナジーパートナーに対し、6月25日、特定商取引法に基づき、一部業務について行政停止命令を出した。
該当する業務は、電話勧誘販売業務で、いわゆるアウトバウンドによるセールス電話だ。停止期間は6月26日から12月25日までの6カ月間。電話勧誘販売の停止ならびに、特定商取引法に関する違反行為の原因究明や、再発防止策と社内のコンプライアンス体制の構築、社内や委託先等に周知徹底することが指示されている。
行政処分対象業務の委託先は4社
不適切な営業行為の内容
編集部では、東京電力エナジーパートナーの広報部門に対して質問状を出したが、それによると、行政処分の中で勧誘事例として指摘された対象は、昨年、不適切な営業行為を行い、かつ録音音声を改ざんが発覚したテレマーケティング大手のりらいあコミュニケーションズを含めて4社(りらいあコミュニケーションズ以外は社名非公表)に委託していた業務とのこと。
処分対象として消費者庁から指摘された営業行為の内容については、次の3点だ。
(1)勧誘目的等の明示義務に違反する行為:契約中の電気小売供給契約についての連絡事項伝達のために電話したかのように告げるのみで、その電話がガス小売供給契約の締結について勧誘をするためであることを告げていない
(2)役務の対価についての不実告知:電気小売供給契約および本件ガス小売供給契約の両方をまとめて締結すれば、その電気料金は、消費者が契約中の当該特定事業者の電気料金と比較して、一律に年間1200円程度安くなるかのように告げている
(3)役務の対価についての事実不告知:電気の月間使用量が300kWhを超えると、同社の料金プランの電気およびびガスの当該月料金総額の方が、消費者が契約中の、ある特定の事業者が提供する料金プランの電気、ガスの当該月の料金総額よりも高くなることが一般的に起こるにも関わらず、当該事実を告げていない)
端的にいうと、勧誘であるにも関わらず「ご連絡」として電話し、かつ消費者にとって不利益な情報を明かすことのないまま、メリットになる情報のみを説明したという行為だ。
のべ66社の委託先に品質チェック
ガイドラインを策定
なお、同社では、発覚した不適切な営業行為を受けて昨年9月、電力・ガス取引監視等委員会から「小売供給契約の締結に係る説明義務違反について」の業務改善勧告が出されている。これを受けて、社長を委員長とする営業品質管理委員会を設置し、さまざまな再発防止対策および営業品質向上にて取り組んでいる。
2021年4月末には、営業品質向上に向けた取り組み状況を公表。そのなかで、「のべ66社(2021年4⽉1⽇現在)の委託先に対し、実地監査および定例報告会を通じた営業品質チェックを実施」とある。そのチェックの内容は次の通りだ。
a)営業品質を担保するため、契約や委託管理を行う際の視点やポイントをリスト化、情報共有ルールや第三者チェック機能があるかなど記載した「営業品質担保のためのガイドライン」を策定。営業品質を担保する管理体制・能力の有無を、チェックシートをもとに確認・評価する仕組みを導入
b)チェックシート中で、営業品質管理体制について、当該業務全般を監督する社内体制が明確であること(統括責任者や業務指示ルールの明確化)や、営業ライン外の社内第三者(総務部門、内部監査室など)がチェックする仕組みがあることを確認し、顧客からのクレームや取り消し申し出、不適切な対応が 疑われる内容などの発生に際し、適切に対応し東京電力エナジーパートナーに報告がなされる営業品質管理能力があるかなどを確認
c)東京電力エナジーパートナーの業務管理箇所において、a、bの取り組みを委託先との契約締結・更新の他、 「定期監査」「抜き打ち監査」「定例業務報告会」といった機会を活用して継続して確認するとともに、監査結果を営業品質管理担当に報告。報告を通じて横断的に品質管理状況を確認・評価し、必要に応じて改善指導・支援を行う。
信頼回復図るりらいあ社
「クライアントの意向」は絶対か?
一方、唯一、社名が公開されているりらいあコミュニケーションズでは、2020年7月に諮問委員会を設置。8月には「信頼回復に向けた取り組みの基本方針(大綱)」を公表するなど、業務改善に取り組むと同時に、同社ホームページ上に「信頼回復への取り組み」ページを開設。内部監査によってコンプライアンスに問題があった事案を公開している。
BPOビジネスにおいて、「クライアントの意向」は絶対とされている。結果、現場には有形無形のプレッシャーがかかり、コンプライアンス違反、あるいはそれに近い行為を誘引していると推察される。
今回の行政処分は、BPOベンダーからすればクライアントである東京電力エナジーパートナーへのもので、半年におよぶ業務停止が与える影響は決して小さくない。BPOベンダーが真に「クライアントのビジネス貢献」を志向するのであれば、こうしたリスクを指摘できる、そしてリスクを回避した業務を提案する関係作りが求められる。
BPOは、人手不足が深刻化することが確実な今後、より重要性を増すビジネスだ。同事案に限らず、「コンプライアンスに抵触する、あるいはギリギリ」の業務が存在するのであれば、りらいあコミュニケーションズの取り組みのように内部監査の結果を公開するといった、BPO各社、あるいは業界全体の自浄作用が求められそうだ。
該当する業務は、電話勧誘販売業務で、いわゆるアウトバウンドによるセールス電話だ。停止期間は6月26日から12月25日までの6カ月間。電話勧誘販売の停止ならびに、特定商取引法に関する違反行為の原因究明や、再発防止策と社内のコンプライアンス体制の構築、社内や委託先等に周知徹底することが指示されている。
行政処分対象業務の委託先は4社
不適切な営業行為の内容
編集部では、東京電力エナジーパートナーの広報部門に対して質問状を出したが、それによると、行政処分の中で勧誘事例として指摘された対象は、昨年、不適切な営業行為を行い、かつ録音音声を改ざんが発覚したテレマーケティング大手のりらいあコミュニケーションズを含めて4社(りらいあコミュニケーションズ以外は社名非公表)に委託していた業務とのこと。
処分対象として消費者庁から指摘された営業行為の内容については、次の3点だ。
(1)勧誘目的等の明示義務に違反する行為:契約中の電気小売供給契約についての連絡事項伝達のために電話したかのように告げるのみで、その電話がガス小売供給契約の締結について勧誘をするためであることを告げていない
(2)役務の対価についての不実告知:電気小売供給契約および本件ガス小売供給契約の両方をまとめて締結すれば、その電気料金は、消費者が契約中の当該特定事業者の電気料金と比較して、一律に年間1200円程度安くなるかのように告げている
(3)役務の対価についての事実不告知:電気の月間使用量が300kWhを超えると、同社の料金プランの電気およびびガスの当該月料金総額の方が、消費者が契約中の、ある特定の事業者が提供する料金プランの電気、ガスの当該月の料金総額よりも高くなることが一般的に起こるにも関わらず、当該事実を告げていない)
端的にいうと、勧誘であるにも関わらず「ご連絡」として電話し、かつ消費者にとって不利益な情報を明かすことのないまま、メリットになる情報のみを説明したという行為だ。
のべ66社の委託先に品質チェック
ガイドラインを策定
なお、同社では、発覚した不適切な営業行為を受けて昨年9月、電力・ガス取引監視等委員会から「小売供給契約の締結に係る説明義務違反について」の業務改善勧告が出されている。これを受けて、社長を委員長とする営業品質管理委員会を設置し、さまざまな再発防止対策および営業品質向上にて取り組んでいる。
2021年4月末には、営業品質向上に向けた取り組み状況を公表。そのなかで、「のべ66社(2021年4⽉1⽇現在)の委託先に対し、実地監査および定例報告会を通じた営業品質チェックを実施」とある。そのチェックの内容は次の通りだ。
a)営業品質を担保するため、契約や委託管理を行う際の視点やポイントをリスト化、情報共有ルールや第三者チェック機能があるかなど記載した「営業品質担保のためのガイドライン」を策定。営業品質を担保する管理体制・能力の有無を、チェックシートをもとに確認・評価する仕組みを導入
b)チェックシート中で、営業品質管理体制について、当該業務全般を監督する社内体制が明確であること(統括責任者や業務指示ルールの明確化)や、営業ライン外の社内第三者(総務部門、内部監査室など)がチェックする仕組みがあることを確認し、顧客からのクレームや取り消し申し出、不適切な対応が 疑われる内容などの発生に際し、適切に対応し東京電力エナジーパートナーに報告がなされる営業品質管理能力があるかなどを確認
c)東京電力エナジーパートナーの業務管理箇所において、a、bの取り組みを委託先との契約締結・更新の他、 「定期監査」「抜き打ち監査」「定例業務報告会」といった機会を活用して継続して確認するとともに、監査結果を営業品質管理担当に報告。報告を通じて横断的に品質管理状況を確認・評価し、必要に応じて改善指導・支援を行う。
信頼回復図るりらいあ社
「クライアントの意向」は絶対か?
一方、唯一、社名が公開されているりらいあコミュニケーションズでは、2020年7月に諮問委員会を設置。8月には「信頼回復に向けた取り組みの基本方針(大綱)」を公表するなど、業務改善に取り組むと同時に、同社ホームページ上に「信頼回復への取り組み」ページを開設。内部監査によってコンプライアンスに問題があった事案を公開している。
BPOビジネスにおいて、「クライアントの意向」は絶対とされている。結果、現場には有形無形のプレッシャーがかかり、コンプライアンス違反、あるいはそれに近い行為を誘引していると推察される。
今回の行政処分は、BPOベンダーからすればクライアントである東京電力エナジーパートナーへのもので、半年におよぶ業務停止が与える影響は決して小さくない。BPOベンダーが真に「クライアントのビジネス貢献」を志向するのであれば、こうしたリスクを指摘できる、そしてリスクを回避した業務を提案する関係作りが求められる。
BPOは、人手不足が深刻化することが確実な今後、より重要性を増すビジネスだ。同事案に限らず、「コンプライアンスに抵触する、あるいはギリギリ」の業務が存在するのであれば、りらいあコミュニケーションズの取り組みのように内部監査の結果を公開するといった、BPO各社、あるいは業界全体の自浄作用が求められそうだ。