<著者プロフィール>
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す
最近の悩み:昔は痩せの大食いだったのが、最近は小食の小太りになっていること
「地元密着型コンビニ」が大手に勝つ理由
ISラボ 代表 渡部弘毅
かつて大学入学のため上京して、最も「都会」を感じたのは、夜中に営業しているセブンイレブンと吉野家だった、わたちゃんです。下宿の近所で夜中に牛丼食べて、帰りにコンビニエンスストアで週刊誌を買って帰るのが都会人だと思っていました。
大手3社の寡占が強まるコンビニ業界ですが、北海道を地盤に展開している「セコマ(セイコーマート)」は、道内店舗数首位を守り続けており、コロナ禍で大打撃を受けた業界のひとつともいわれるコンビニにあって好調な業績を維持しています。
その要因が、地元密着型の店舗づくりと、製・配・販の自社運営です。通常、コンビニ業態の商圏人口は2000〜3000人が必要とされ、都心ではオフィス需要を狙った出店も多く、そもそも市場が飽和気味だったところにコロナの打撃を受けて大手3社はいずれも減収となりました。しかしながらセコマは、郊外型の店舗が多いという条件がダメージを最小限に抑え、さらに商圏人口が1000人に満たない地域にも出店して地元密着スタイルでコロナ・ショックをカバーしています。
最大の特徴は、品揃えにあります。地域にとっては小型スーパーの役割を果たし、日用品や地域特有の需要に合わせた品揃えによって、来店客は「生活に必要なものがほとんどある」という利便性や親しみやすさから、来店頻度と客単価を高めています。スーパーマーケットや大手コンビニチェーンが撤退したあとに、「買い物難民化を避けたい」という住民の要請にもとづいて出店するケースも多く、「困っている地域を助けてくれる企業」というブランドイメージもクチコミで広がっています。
その地元密着型経営を支えるビジネスインフラが、製・配・販の自社運営です。大手コンビニはスケールメリットに基づいたバイイングパワーで社外の卸やメーカーと製造、配送、販売の関係を作りあげていきます。一方、セコマでは製造と物流を自前で手掛け、店舗も8割が直営の「持つ経営」を実践、自社で培ったノウハウを最大限活用してトータルコストを削減しています。大手コンビニでは、販売機会損失を防ぐための配送時間の厳守が重要であることに対して、セコマでは多少到着時間が遅れても、効率的な配送計画を立てます。これにより、大手でのトラック積載率が4〜5割といわれているのに対し、セコマは9割を実現しています。
小売りフォーマットの最先端を走っているコンビニのはずが、古き良き地元密着小売りの精神を取り入れた新たなフォーマットへの取り組みとして発展した、素晴らしい事例です。
ということで、上京してはや40年、さすがに夜中に出歩くことは少なくなりましたが、アフターコロナを目指して、新たなライフスタイルのフォーマットを模索してみたいと思います。まずは早寝早起きかな。
図 大手コンビニとセコマの比較