一般社団法人サポートデジタル協会は2023年7月25日、カスタマーサポート業務における、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)や生成AI「ChatGPT」の活用状況を紹介するセミナー「Support DX Summit 2023〜LLM Conference〜」を開催した。
まず、コンタクトセンター運営者の視点から、生成AIの活用について討論した。モデレータを務めたプライムフォース代表取締役の澤田哲理氏は、生成AIを中心としたデジタル化に伴い、センターマネジメントで「エフォートレス化」「プロアクティブ化」が重視されつつあると指摘。りらいあコミュニケーションズ DX戦略本部 本部長の本岡晃彦氏は、「カスタマーサポート業界では、大きく分けて『音声データのテキスト化』と『応対履歴のVOC活用』の課題があったが、生成AIでその課題が解消される」と活用メリットを説明した。また、NeoContact 代表取締役の出水 啓⼀朗氏は、「DXを推進する企業が急激に増えている一方で、実際にAIツールを駆使できる人材の育成にも力を入れていく必要がある」と指摘した。ベネッセコーポレーションで校外学習カンパニー マーケティング開発本部の副本部長を務めていた境 和輝氏は、「社員一斉に生成AIを活用する体制を取り入れたことで、社内業務の効率化について議論する機会も増え、興味関心は非常に高い」と語った。
左から、りらいあコミュニケーションズの本岡晃彦氏、
ベネッセコーポレーションの境 和輝氏、NeoContactの出水 啓⼀朗氏
続くパネルディスカッションでは、モビルス代表取締役社長の石井智宏氏がモデレータを務め、「ツールベンダーの事業に与える影響」と題して、ITベンダーの視点で見たLLMの期待値について討論した。カラクリ代表取締役の小田志門氏は、「生成AI・LLMのツール開発で『基盤(汎用)モデルの開発』は数百億円規模の投資を要する点から着手が困難ため、他社と差別化を図るうえでは、特定の領域や業界向けにカスタマイズした『独自モデルの開発』に注力する必要がある」と強調。アドバンスト・メディア取締役の大柳伸也氏は、「音声認識した日本語の通話履歴をChatGPTに学習させる際、英語と比較して多量のトークン数を要するため、日本語を生成AI・LLMで処理する過程で一定の工夫が必要」と述べた。KDDIエボルバ 企画統括本部 副統括本部長の白川 始氏は、これまでのAIブームと異なるポイントとして「APIという汎用的な形で利用できる」点に言及した。
カラクリ代表取締役 小田志門氏
次のセッションでは、すでに生成AI活用の実証実験を開始した企業の事例から、実際に応対業務で活用していく過程で得られた成果と課題点を討論した。パネリストとして、JR西日本カスタマーリレーションズ 取締役の岩崎隆利氏が登壇。同社センターでは、オペレータの経験やスキルの違いによって対応品質にバラつきがあったことから、一部業務の自動化を検討。通話履歴の要約に、ChatGPTおよびELYZAの文章要約AI「ELYZA DIGEST」を導入、運用開始し、一定の成果をあげている。
同セッションでは、ChatGPTと国産型LLMの展開についても討論。日本語特化型のLLM開発に着手しているサイバーエージェントの子会社であるAI Shift代表取締役の米山結人氏は、「社内業務で自社のLLMを実際に活用し、与えられたバナーに即した広告を自動生成する機能に応用するなど、活用効果を検証しています」とLLM活用の取り組みを紹介した。
モデレータの向川 啓太氏は、回答内に嘘が混ざる「ハルシネーション」の課題を指摘。飯塚純也氏は、大規模言語AIの開発に携わった経験を基に、「導入企業側でファクトチェックを実施することでハルシネーションを最小限に抑えられるものの、完全に防止することは難しい」と指摘した。
サポートデジタル協会 代表理事の向川啓太氏
基調講演では、「LLMがカスタマーサポートに与えるインパクト」と題して、ワークスモバイルジャパン 執行役員 CLOVA統括本部 本部長の砂金信一郎氏が登壇。砂金氏は、自動電話応対サービス「LINE AiCall」を開発する過程でもっとも意識した点が、「個人情報を含むデータの処理」と説明。また、生成AIが普及して以降も、AIのみでの顧客サポートは不可能で、人間とAIによるハイブリッドなアプローチが必要と指摘。「AIが自動化できる範囲にも限界はあり、人間の判断や監督は不可欠。生成AIの導入自体が『目的』となることなく、効率的な業務改善を実現してほしい」と結論付けた。
ワークスモバイルジャパン 執行役員の砂金 信一郎氏
まず、コンタクトセンター運営者の視点から、生成AIの活用について討論した。モデレータを務めたプライムフォース代表取締役の澤田哲理氏は、生成AIを中心としたデジタル化に伴い、センターマネジメントで「エフォートレス化」「プロアクティブ化」が重視されつつあると指摘。りらいあコミュニケーションズ DX戦略本部 本部長の本岡晃彦氏は、「カスタマーサポート業界では、大きく分けて『音声データのテキスト化』と『応対履歴のVOC活用』の課題があったが、生成AIでその課題が解消される」と活用メリットを説明した。また、NeoContact 代表取締役の出水 啓⼀朗氏は、「DXを推進する企業が急激に増えている一方で、実際にAIツールを駆使できる人材の育成にも力を入れていく必要がある」と指摘した。ベネッセコーポレーションで校外学習カンパニー マーケティング開発本部の副本部長を務めていた境 和輝氏は、「社員一斉に生成AIを活用する体制を取り入れたことで、社内業務の効率化について議論する機会も増え、興味関心は非常に高い」と語った。
左から、りらいあコミュニケーションズの本岡晃彦氏、
ベネッセコーポレーションの境 和輝氏、NeoContactの出水 啓⼀朗氏
続くパネルディスカッションでは、モビルス代表取締役社長の石井智宏氏がモデレータを務め、「ツールベンダーの事業に与える影響」と題して、ITベンダーの視点で見たLLMの期待値について討論した。カラクリ代表取締役の小田志門氏は、「生成AI・LLMのツール開発で『基盤(汎用)モデルの開発』は数百億円規模の投資を要する点から着手が困難ため、他社と差別化を図るうえでは、特定の領域や業界向けにカスタマイズした『独自モデルの開発』に注力する必要がある」と強調。アドバンスト・メディア取締役の大柳伸也氏は、「音声認識した日本語の通話履歴をChatGPTに学習させる際、英語と比較して多量のトークン数を要するため、日本語を生成AI・LLMで処理する過程で一定の工夫が必要」と述べた。KDDIエボルバ 企画統括本部 副統括本部長の白川 始氏は、これまでのAIブームと異なるポイントとして「APIという汎用的な形で利用できる」点に言及した。
カラクリ代表取締役 小田志門氏
次のセッションでは、すでに生成AI活用の実証実験を開始した企業の事例から、実際に応対業務で活用していく過程で得られた成果と課題点を討論した。パネリストとして、JR西日本カスタマーリレーションズ 取締役の岩崎隆利氏が登壇。同社センターでは、オペレータの経験やスキルの違いによって対応品質にバラつきがあったことから、一部業務の自動化を検討。通話履歴の要約に、ChatGPTおよびELYZAの文章要約AI「ELYZA DIGEST」を導入、運用開始し、一定の成果をあげている。
同セッションでは、ChatGPTと国産型LLMの展開についても討論。日本語特化型のLLM開発に着手しているサイバーエージェントの子会社であるAI Shift代表取締役の米山結人氏は、「社内業務で自社のLLMを実際に活用し、与えられたバナーに即した広告を自動生成する機能に応用するなど、活用効果を検証しています」とLLM活用の取り組みを紹介した。
モデレータの向川 啓太氏は、回答内に嘘が混ざる「ハルシネーション」の課題を指摘。飯塚純也氏は、大規模言語AIの開発に携わった経験を基に、「導入企業側でファクトチェックを実施することでハルシネーションを最小限に抑えられるものの、完全に防止することは難しい」と指摘した。
サポートデジタル協会 代表理事の向川啓太氏
基調講演では、「LLMがカスタマーサポートに与えるインパクト」と題して、ワークスモバイルジャパン 執行役員 CLOVA統括本部 本部長の砂金信一郎氏が登壇。砂金氏は、自動電話応対サービス「LINE AiCall」を開発する過程でもっとも意識した点が、「個人情報を含むデータの処理」と説明。また、生成AIが普及して以降も、AIのみでの顧客サポートは不可能で、人間とAIによるハイブリッドなアプローチが必要と指摘。「AIが自動化できる範囲にも限界はあり、人間の判断や監督は不可欠。生成AIの導入自体が『目的』となることなく、効率的な業務改善を実現してほしい」と結論付けた。
ワークスモバイルジャパン 執行役員の砂金 信一郎氏