白倉 良太 氏
mimiyori推進室 室長
<コーナー解説>
ITソリューションベンダーのキーマンに製品・販売戦略を聞きます。
再春館システム
顧客応対の根幹「聞く」を補正
オペレータの耳への負荷を軽減
企業PROFILE
所在地:東京都港区高輪4-10-58
代表:西川正明 代表取締役
設立:1985年2月26日
資本金:4800万円
従業員数:142人(2023年4月時点)
URL:www.saishunkansys.com/lp/kikoe/
顧客の言葉を聞き漏らさないように音量を大きくする──長時間ヘッドセットを装着して顧客に対応するオペレータは、とかく「耳」に負荷がかかりやすい。
再春館製薬所のグループ会社で、システムインテグレーションやビジネスアウトソーシング事業を展開する再春館システムのmimiyori推進室 室長の白倉良太氏は、「再春館製薬所のオペレータにアンケートを実施したところ、加齢性難聴が起こりやすくなる50代以上だけでなく、20代でも耳の不調を訴えるケースが散見されました」と、振り返る。
耳の不調は、「聞き返し」などによる顧客満足度の低下に加え、オペレータのストレス蓄積につながり、放置すれば離職する可能性すら高まる。ボイスボットによる応対自動化を背景に、オペレータには、より高度な応対が求められるなか、「ストレスなく業務に集中できる環境を作ることが、今後のオペレーション品質の維持・向上を図るうえで不可欠」(白倉氏)。
同社は、2018年から難聴者向けスピーカーの開発事業を担うグループ会社と共同で、音声通話支援システム『mimiyori』を開発。5年越しで検証・改善を積み重ね、今秋、本格提供を開始した。
音声信号処理を変換するアンプと、専用のヘッドセットに接続して使うもので、アンプ部分には3段階で音声を調整するプリセットボタンが用意されている。白倉氏は「顧客の声質や電話音質に加え、オペレータ自身の体調や座席の位置など、さまざまな要素で“聞こえ方”は変化します。通話しながら聞こえやすい音に調整できるようにしました」と強調する。また、顧客側が聞きとりやすくなるよう、送話音量の調整機能も付加した。
再春館製薬所の20代〜60代のオペレータに1カ月間、使用してもらった後に実施したアンケート調査では、いずれかのプリセットの使用で「顧客の声が聞き取りやすくなった」という結果が出た。送話音量の最適化により、顧客の“無意識な声の張り上げ”もなくなった。今後は、顧客、オペレータともにシニア層の比率が高まっていくことを鑑み、随時プリセットの見直し、最適な“聞こえ”を提供する計画という。
白倉氏は、「製品の根幹である音声の改善だけでなく、ヘッドセットの形状の拡充にも着手、多様なニーズに応える製品に進化させていきたい」と展望を語る。現状は片耳モデルのみだが、耳掛けモデルや両耳モデルに対応し、利用シーンを拡大するという。このほか、再春館グループ会社が展開するコールセンター事業や通販・CRMシステムなどと組み合わせて提案を行う方針。