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2017年5月号 <インタビュー>

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亦賀 忠明 氏

AI活用は「人材」の問題でつまずく!?
ムーブメントに終わらせない長期戦略のすすめ

ガートナー ジャパン
リサーチ部門 バイスプレジデント 兼 最上級アナリスト
亦賀 忠明 氏

「国内のAI(人工知能)活用は、このままでは“お祭り”で終わる」。ガートナー ジャパン バイスプレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明氏は、現在のAIブームに対し厳しい見方を隠さない。そのうえで、「ベンダーだけでなく、ユーザー企業も“AIを育て、使いこなす人材”への投資が必要と説く。

Profile

亦賀 忠明 氏(Tadaaki Mataga)

ガートナー ジャパン
リサーチ部門 バイスプレジデント 兼 最上級アナリスト

1985年、大手ベンダーに入社し、各種システム開発業務に従事する。1997年にガートナー ジャパン入社。ITインフラストラクチャ全般を中心とする調査分析を担当。国内外の主要なベンダーやSI、一般企業に、戦略的アドバイスを行っている。

──コンタクトセンター関連のIT市場は、もはや「AI」一色です。どう捉えていますか?

亦賀 コンタクトセンターに限らず、あらゆるソリューションがAIとされているので、何がAIで、なぜAIなのかの理解が進まないまま、ユーザーもベンダーも大騒ぎしているという印象が強いですね。とくに先行事例とされている企業のなかには、導入が「目的」になっているように見えるケースもあります。AIといえどもITである以上、課題解決の「手段」のひとつ。期待が過熱しすぎて「ブームで一儲けしたい」というベンダーと、「先進事例だ」と強調したいユーザーが実態以上に訴求しているように見えます。これも、AIで「何でもできる」という誤解が生じてしまった結果ではないでしょうか。

──昨年末に発表の「AIに関する10の誤解」にも「すごく賢いAIがすでに存在する」「誰にでもすぐにすごいことができる」ことを挙げていますね。

亦賀 とくに経営陣に多い誤解だと思います。みんな“お祭り”に参加したいのはわかりますが、発表されているソリューションや事例には“なんちゃってAI”といえるレベルのものも多く、お祭りのレベルに疑問を感じます。

──「AI」と「なんちゃってAI」の違いは。

亦賀 端的に言うと、学習能力です。なんちゃってAIは、「If-Then-Else」のプログラムで実現できてしまうもので、自ら回答パターンを導き出す能力は有していません。ただし、学習能力を有しているAIでも、「人間と同様の知能、学習能力」を実現するものは現状では存在しません。日本国内には、AIベンチャーと称する企業がすでに100社以上あります。例えば同じディープラーニングを訴求していても、性能は千差万別。ところが、ほとんどの場合、そのAPIもアルゴリズムも非公開で、違いをユーザー側で把握するのは困難です。従って、「AIは万能」という誤解が生まれました。そうした意味では“本物”と“なんちゃって”が十把一絡げにされる原因の多くはベンダーにあると思います。一方で、ユーザーも本物と偽物を見分ける目利き力が試されていると言えます。

 今は、あくまで用途を絞り込んだ特定目的の機械知能である「弱いAI」の段階です。「導入したらすぐに使える」「あらゆる業務に適用できる」にはまだ相当の時間を要するはずで、この誤解を解かないと「過度な期待」から一気に幻滅期になり、また一過性のブームで終わる可能性すらあります()。

──それでも近年は、クイズ番組や囲碁の対局で勝利するなど、目覚ましい発展を遂げているように思います。

図 日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2016年

図 日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2016年

出典:ガートナー(2016年9月)
※画像をクリックして拡大できます

(聞き手・横田麻生子)
続きは本誌をご覧ください


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