CS Strategic Planning Manager
島津 智子 氏(左)
取締役副社長
萬年 良子 氏(右)
<コーナー解説>
カスタマーサービスに注力し、コールセンターやWebサイト、アプリなどを有効活用し成長している企業のキーマンに戦略を聞きます。
ベルトラ
全社KPIに「NPS」を採用
企業プロフィール
設立:2004年4月16日
所在地:東京都中央区八重洲1-6-6 八重洲センタービル 2F
事業内容:旅行におけるアクティビティの予約代行
URL:https://www.veltra.com/jp/
旅のアクティビティ(現地でのツアー)に特化した予約サイトを運営するベルトラ。約120万人の会員(2017年6月初旬現在)を有し、グローバルにも英・仏・米(ハワイ)など8拠点を展開している新進気鋭の旅行会社だ。
問い合わせ対応は、基本的にメール(Webフォーム)で、東京の本社で40名弱の体制で対応している。
同社のカスタマーサービス体制における最大の特徴は、「全社的なKPIとしてネット・プロモーター・スコア(NPS)を活用していること」(萬年良子副社長)にある。
例えばカスタマーサービス部門の場合、個人評価の40%をNPSが占める。対応した顧客に対し、メールでアンケートを依頼する手法だ(画像参照)。残りの評価項目は、1時間以内の対応件数やレスポンスタイム(返信までに要した時間)、セールス・バイ・コンサルテーション(アップセルやクロスセルによる売り上げ貢献)など。基本的には「生産性が向上すれば品質も向上する」という考え方が根底にあり、結果として顧客満足やロイヤルティ──NPSに跳ね返ってくるというモデルのようだ。
同社に限らず、顧客が問い合わせするということは、その時点で「サービスがよくわからない」「サイトが使いにくい」などのネガティブな感情が発生している。従って、NPSをプラスに転じることは容易ではない。リアルタイムに感情を汲み取りながらやり取りできる電話ではなく、メール対応ならなおさらだ。
にも関わらず、同社のカスタマーサービス利用者のNPSは「月ごとに記録を更新しており、5月は26%。エリア別の全チームで30%に近づいています」(島津智子氏)という。とくにトラブルや不都合なくツアーを終えた顧客を含む全体平均は19%なので、「マイナスの顧客体験のリカバリー」という顧客接点としての役目はほぼ果たしている。
NPSは、顧客接点をはじめとした同社のサービス品質だけで決定するものではなく、むしろ現地のアクティビティを仕切るパートナー企業の品質という要素の方が大きい。そこで、デトラクター(NPS調査で0〜6をつけた顧客)へのフォローを実施。要因を聴き取り、パートナーに原因があった場合、営業を通じてフィードバックするなど、改善を要求する。NPSは営業部門にとっても評価項目となったので、改善要求は従来よりも真剣度が違う。NPSを経営指標化する最大のメリットは、パートナーまで含めた顧客視点の徹底にあるといえそうだ。
カスタマーサービス利用者に依頼するNPS調査の画面例