1200万人の“会えない顧客”に発信する
「銀行を持ち歩く」オムニチャネル戦略
りそな銀行
オムニチャネル戦略部 部長
石原 照久 氏
低金利が続くなか、銀行はビジネスモデルの変革に迫られている。りそなグループのオムニチャネル戦略を牽引する石原照久部長は「銀行口座を持っていても店頭には来ない人が大半。非対面チャネルを強化し、“会えない”お客さまを取り込む仕組みが重要」と強調。本格始動しはじめた、りそなグループの取り組みを聞いた。
Profile
石原 照久 氏(Teruhisa Ishihara)
りそな銀行 オムニチャネル戦略部 部長
大学卒業後、協和銀行入社。りそな銀行発足後は、マーケティング戦略部で商品・サービスの企画開発、CRMシステム、ATM、コールセンター等の開発に従事。茗荷谷支店長、東京本社移転推進室長、チャネル企画室長、購買戦略部長を経て、2017年4月より現職。
──FinTechなどテクノロジーの進化により「銀行が変わる」と言われています。りそなグループでは、どのような戦略を取られるのでしょうか。
石原 超低金利が続き、これまでの「預金を貸出で運用して利益を得る」というビジネスモデルが成立しにくくなっているうえに、少子高齢化によるビジネス規模の縮小も避けられない状況です。規制緩和により高収益商品の取り扱いの幅は確かに拡大していますが、本業がダウンサイジングしては、「国内リテール市場に特化したビジネス」を経営方針とする当社の経営環境は厳しいと言わざるを得ません。グループ3行で運営するりそな経営改革委員会では、状況を打破するための議論を重ねてきました。そこで大きくクローズアップしたのが「チャネル戦略」です。
──具体的には。
石原 現在、当社グループには約1300万人のアクティブな個人取引先があります。しかし、このうち実際に来店し、店頭でお話できているお客さまは100万人程度です。つまり、大多数のお客さまとは直接コミュニケーションできていないのです。そこで、残る1200万人のお客さまに能動的に働きかけ、投資信託や外貨預金などの金融商品や決済サービスなどをもっと積極的にご利用いただくために“非対面チャネルの強化”という方針を打ち出しました。2015年4月には「オムニチャネル戦略室」を組織、16年1月に「部」に改組して、顧客接点改革を推進しています。
スマホで“双方向コミュニケーション”
対面・非対面をつなぐ仕組み構築
──1200万人にリーチする方法は。
石原 デジタルを活用した双方向コミュニケーション手法の確立と、対面・非対面チャネルをいかに融合するかを念頭にサービス開発しています。当社グループのホームページは年間2300万件のアクセスがあり、総ページビューは1億6000万に達します。このポテンシャルを最大限に活かし、対面窓口や非対面チャネルへ誘導する流れを作るのが我々のオムニチャネル戦略です。
(聞き手・山本 浩祐)
続きは本誌をご覧ください