コロナ禍のカスタマーエクスペリエンスを支える
「プロアクティブサポート」の成果
アドビ
デジタルメディア・カスタマーエクスペリエンス本部
本部長
辻 寿 氏
コロナ禍が追い風となった企業は、実は数多い。アドビもその1社だ。BtoBでは電子サイン、BtoCでは、巣篭もり消費におけるクリエイティブ活動。それぞれを支えるサブスクリプション・サービスは利用者層を拡大し、まさに社会貢献を果たした。CX部門を率いる辻氏に、「これからのCX視点でのサポートのあり方」を聞いた。
Profile
辻 寿 氏(Hisashi Tsuji)
アドビ デジタルメディア・カスタマーエクスペリエンス本部 本部長
デル(現デル・テクノロジーズ)、ネットフリックスを経て、グローバルBPO企業、TDCXのカントリーマネージャーを務め現職に至る。質の高いCXを実現するサービスポートフォリオ、コンタクトチャネル、テクノロジーについて、アジア地域での最適解を導き出すことをミッションに、チームとともに高い成長率を誇るアドビ製品サポートをリードする。
──コロナ禍でビジネスに変化は生じていますか。
辻 さまざまなプロダクト/サービスでお客様層の拡大が見られています。法人向けでは電子サインの需要拡大で「Adobe Acrobat DC」などの「Document Cloud」をご利用いただく企業が増えました。個人向けも、巣篭もり消費において画像はもちろん、You TubeやTikTokなどで動画を扱ってみたいというニーズが高まり、お客様が増え続けています。とくに個人向けの製品は競合も多いのですが、必要な機能がパッケージ化されている強みを発揮できていると感じています。
──顧客の属性や傾向がこれまでとは違う、ということはありますか。
辻 Document Cloudは企業の基幹システムに関わるツールですから、画像やデザインといったクリエイティブ関連のプロダクトと違い、同システムに関わる総務や人事、営業といった部門からの問い合わせが急増しています。カスタマーエクスペリエンスのチームも、同製品については人数を倍増して対応しているほどです。問い合わせについては、「従来の印鑑よりも法的効力が落ちるのか」といったものが増えており、関連部門と傾向を共有しながら対応しているところです。
一方、クリエイターや一般消費者向けの「Creative Cloud」については、パッケージ製品からクラウド化した際のユーザー層の拡大がさらに加速しています。意外に思われるかもしれませんが、アドビ製品は初心者にも受け入れられやすい、問い合わせしやすいというイメージに転換していると感じます。問い合わせ内容を分析すると、初心者の方からのノンテクニカルな問い合わせ──当社で頭文字を取って「ABC」と称している「Activation(アクティベーション)」「Billing(課金/支払い)」「Cancel(キャンセル)」の3つのカテゴリー、それと「D」である「Download」関連が大半を占めます。
アウトバウンドで顧客サポート
リテンション率が大幅向上
──カスタマーエクスペリエンスの観点から、課題をどう捉えていますか。
辻 サブスクリプション・ビジネスにおいては、購入されたお客様に継続利用してもらうリテンションがもっとも重要です。そのためには、あらゆる機会を捉えて顧客エンゲージメントを高める必要があります。お客様個々の活用レベルを把握して、サービスをより有効活用してもらうために提案する「プロアクティブなサポート」が大きなポイントになると思っています。
(聞き手・矢島竜児)
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