<著者プロフィール>
ビジネスボイストレーニングスクール「ビジヴォ」代表。「声」「話し方」に問題を抱えるビジネスパーソンを4万人指導。250社の企業研修を行う。音楽家ならではの聴力と技術を駆使した、「超絶対音感」によるボイストレーニングが話題を呼び、TVなど多数出演。著書に『「話し方」に自信がもてる 1分間声トレ』『ビジネスの発声法』などがある。
マスク越しの会話は「1.5倍」を心がけよう
秋竹朋子
ワクチン接種が開始されたものの、いまだ収束のみえないコロナ禍では、まだまだマスク生活の弊害が続くでしょう。対面や社内から参加するオンライン会議では、マスク越しの会話が求められ、どうしても声がくぐもり、聴こえにくくなりがちです。
マスクをつけていると、息を強く吐かなければ、声がこもります。自分の思いを相手にはっきり伝えられません。会話の際は、リアクションも含めて、普段の1.5倍で伝える努力を意識してみてください。例えば、単語の頭の音を、1.5倍の強さで発声する。口の開け方を、1.5倍大きくして話すのも、発音が明瞭になり、聞き取りやすくなります。アクリル板を挟む場面でも、この「1.5倍の法則」を使うとかなり伝わるようになります。
オンラインでのリアクションも、1.5倍、大げさにうなずき、口角をあげて1.5倍の笑顔にするだけでとても感じよく共感している印象に映ります。オンラインミーティングのいいところは、自分が話している姿や見た目、表情を自分で客観的にチェックできる点です。声も表情も、相手を気遣い、1.5倍、大げさに行うのがポイントです。
表情筋と滑舌が密接に関係しているという話を以前書きましたが、暗い表情や無表情は聞き取りにくくなるだけではなく、「機嫌が良くないのだろうか」「好意的ではないのだろうか」と相手を不安にさせます。マスクをつけていると、顔がほとんど見えないため、相手には無表情に見えがちです。このため、同意を示すときには、首をオーバーに縦に動かすなどの工夫が必要です。
また、マスク越しでは、少し大きめに口を開け閉じして話すようにしましょう。母音ごとに口の開け方を区別することで、はっきり聞こえやすくなります。「い」「え」「あ」「お」「う」を、ひと言ずつ区切り、大きく口を開けて発声するトレーニングが有効です(図)。にっこり笑って「い」、少し縦に口を開けて「え」、さらに縦に開けて「あ」、すぼめて「お」、唇を前に突出し「う」の形にします。これを10回ほど繰り返します。
声が通りづらいと感じる場合、その原因のひとつに、息に瞬発力がないことがあります。とくに、カ行・サ行・タ行・ハ行に苦手意識がある人は要注意です。瞬間的に息を強く吐き出すトレーニングがおすすめです。方法は、「シュッ、シュッ、シュッ、シュッ」と強く息を吐くだけ。試合中のボクサーのように“無声音”をとにかく強く出すことで、息の瞬発力が上がります。空いた時間にこまめに続けると、自然と声が通るようになります。