<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp
多チャンネル化
秋山紀郎
若者のインターネット利用の伸びとともに、テレビ離れが進んでいるという。昔は、視聴したテレビ番組について、翌日、学校や職場で話題になることもよくあった。今、若者の間でユーチューバーが話題になることはあっても、テレビ番組が話題になることはあまりないそうだ。なぜテレビ離れが進んでいるのだろうか。テレビ番組のコンテンツが若者を魅了していないのか、YouTubeなどのインターネット上のサービスが優れているのかは分からないが、テレビ視聴率が全体で下がっている事象は、世界中で起きているという。視聴率が下がるとスポンサーが付きにくくなり、制作予算が削られる。そうすると、視聴率が取れる安価な芸人の出演が多くなるのだろう。
一方、視聴する私たちのライフスタイルは多様化している。テレビ以外にゲームや動画配信などさまざまなサービスがあふれ、テレビにも地上波、衛星波、有線放送など視聴者の趣味次第で視聴可能なチャンネルはとても多い。NHKプラスや民放テレビ局が連携した公式テレビポータルでも番組を視聴できる。テレビをリアルタイムで視聴できないときは録画し、CMをカットして早送りで視聴する人も多いだろう。タイムシフトや時短して番組を見ると印象がかなり異なる。こう考えると、視聴者の選択肢が無限に広がる中、どのようなセグメントにターゲットを当てて番組を作るかは、とても難しいだろう。コンタクトセンターで言えば、カスタマージャーニーを踏まえたオムニチャネル戦略といったところだろうか。
さらには、今、別のチャネルとしてWebセミナーも加わった。2020年初頭は、まだ珍しかったが、今では毎日のように開催されるようになった。多チャンネル化によって、視聴者の奪い合いも起きている。芸能人を招聘するケースもあれば、参加者にギフト券が当たるものや、好みのピザがデリバリーされるものもある。一方で、タイトルに魅かれて視聴したが中身が伴わないものもあり、玉石混交だ。開催方式も、会場入りと併用するハイブリッド形式もあれば、あらかじめ録画したものを流す形式もある。運営方法の選択肢が増える中、主催者として、どのような人に、どのようにセミナーを届けたいのか判断に迷うところだろう。
アフターコロナのセミナー事情はどうなっていくだろうか。リモート参加は、セミナー会場が遠方にある場合、とても便利な手段である。これは、ニューノーマルとして定着するだろう。主催者にとっても、開催場所に関わらず、コンテンツが良ければ全国から参加者が期待できるので好都合だ。また、リモート参加者からは質問が出やすいため、その場で回答すると満足度も上がる。ただし現地で商談を進めるなど人材交流は期待できない。同様にプレゼンターがリモート参加の場合は、会場を手配する意味は薄れ、Web形式での開催になるだろう。
このような多チャンネルの時代、いまだにテレビもWebセミナーもマスメディア時代からある視聴者数、あるいは視聴率がKPIとなっている。果たして、それでよいのだろうか。コンテンツが、パーソナライズされていく流れとともに、視聴者の態度変容を測定することが重要であると思う。