<著者プロフィール>
ビジネスボイストレーニングスクール「ビジヴォ」代表。「声」「話し方」に問題を抱えるビジネスパーソンを4万人指導。250社の企業研修を行う。音楽家ならではの聴力と技術を駆使した、「超絶対音感」によるボイストレーニングが話題を呼び、TVなど多数出演。著書に、『年収の9割は声で決まる! 「できる人」だけが知っている声の出し方』『話し方トレーニング』『「話し方」に自信がもてる 1分間声トレ』
心に響くプレゼンを生む「3つの声テク」
秋竹朋子
みなさんは、「『声』が収入に影響する!」ということをご存じでしょうか。
米デューク大学が792人の最高経営責任者(CEO)の男性を対象に、声の音程、年収、経営している会社の規模を調査したことがあります。その結果、低い声の持ち主は、そうでない人と比べて18万7000ドル(約2300万円)も年収が多いことがわかりました。さらに、経営する会社の規模、トップの座に留まっていた期間も、低音ボイスのCEOに軍配があがったそうです。
以前、一流企業の成績優秀者、いわゆる「トップ営業マン」ばかりを集めたセミナーに参加したことがあります。何人もの「できるビジネスパーソン」と話をさせてもらいましたが、ものの見事に全員がいい声の持ち主。ほぼ、100%です。「本当に、いい声をされていますね。どうしてですか」と、私が質問をすると、その答えも異口同音で決まっていました。「練習しましたから」。少し照れたように、声のトーンを落としながら語る口調からは、「あまり、いいたくはないのだけれど」というニュアンスも伝わってきました。「自分の武器をライバルに知られたくない」という気持ちか、あるいはトップ営業マンとしての矜持がそうさせたのかもしれません。
わずかな時間で自分を変革し、ライバルたちに差をつけることができる。「声」というビジネスツールにぜひ注目していただきたいと思います。今回は声の使い方のなかでも、「プレゼンテーション」にフォーカスしたいと思います。
いいプレゼンには、「3つの特徴」があるといわれています。第1に、「数字を使って、説得力を持たせる」。第2に、「頭で理解させるだけでなく、心に訴えかける」。そして最後が、「ドキドキ、ワクワクさせる」。
これらすべてにアプローチできるのが「声」です。まず、カ行やサ行が多く、噛みやすい「数字」は、ひと桁ごとに区切り、頭を強くいう。これだけで、噛みづらくなるのと同時に、数字を強調することができます。
聴衆の「心に訴えかける」ためには、「間(ま)」を有効に使いましょう。「私は(3秒の間) この会社を(3秒の間) もっと大きくしたい(10秒の間) 力を貸してください!」──これは、ある企業の社長が、全社員に向けて話したスピーチです。正直、話の内容自体は、特別なものではありません。しかし、やりすぎにも思えるぐらいの間を取ったおかげで、社員たちの心がグッと引きつけられ、涙ぐむ人もいたほどです。私もその場で拝見したのですが、「さすが!」と感心しました。
最後に、聴衆を飽きさせずに「ドキドキ、ワクワク」させるのは、声の強弱やテンポの変化、つまり「抑揚」です。子どもに読み聞かせをするお母さんは、普段の会話ではありえないほどの抑揚をつけて話をします。それによって、子どもの目がキラキラと輝き、話の世界に没入するのを知っているからです。
平穏や安定を求めるのが難しい時代。変化に対応し、自ら変革した者だけが生き残る。その傾向は、今後ますます強くなっていくでしょう。日々の練習で身につくいい声とそれを活用したプレゼンテーションスキルは、きっとあなたの武器になるはずです。